Other parts of this series:
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- BEYOND RPA -RPAは期待した効果を出せたのか?これまでの総括と求められる次なる一手:第2回 求められる次の一手と2つの方向性
- 第1回 グローバルのイノベーションにみる保険の新たな姿 _今だからできるサービスと日本への示唆~ウェビナー
- 第2回 グローバルのイノベーションにみる保険の新たな姿 _今だからできるサービスと日本への示唆~ウェビナー
- Bank4.0時代に向けた銀行変革 - “破”銀行、“創”銀行:第1回 Bank4.0時代の到来と国内金融機関への影響~ウェビナー
- Bank4.0時代に向けた銀行変革 - “破”銀行、“創”銀行:第2回 Bank4.0時代の“銀行”と実現に向けた鍵~ウェビナー
- 顧客価値と企業経営_Design Pivot 新しいデザインとの向き合い方 第1回 金融機関に求められる新たなビジネスデザイン~ウェビナー
- 顧客価値と企業経営_Design Pivot 新しいデザインとの向き合い方 第2回 新たなデザインとの向き合い方
- デジタルビジネスを加速させる次なるステージの組織運営と人材活用 _デジタルトランスフォーメーション(DX)のその先へ:第1回ディスラプションの進行と金融業界の現状~ウェビナー
- デジタルビジネスを加速させる次なるステージの組織運営と人材活用 _デジタルトランスフォーメーション(DX)のその先へ:第2回 変革へのロードマップ(1)オペレーティングモデル・シフト~ウェビナー
- デジタルビジネスを加速させる次なるステージの組織運営と人材活用 _デジタルトランスフォーメーション(DX)のその先へ:第3回 変革のロードマップ(2)リソース・シフトとワーク・シフト
- 守るテストと攻めるテスト:第1回 創造的破壊(disruption)の進行と金融業界の現状
- 守るテストと攻めるテスト:第2回 創造的破壊(disruption)の進行と金融業界の現状~“攻めるテスト”の要諦
- BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のその先へ _これまでとデジタル化時代における 今後のあるべき姿 :第1回 新たな市場環境とアウトソーシングのかたち
- BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のその先へ - これまでとデジタル化時代における 今後のあるべき姿 第2回 ― BPSのメリットと活用事例
- COVID-19による金融業界へのインパクトと先進事例に学ぶ「ニューノーマル」へのシフト:第1回 COVID-19のインパクトと『ニューノーマル』のかたち
- COVID-19による金融業界へのインパクトと先進事例に学ぶ「ニューノーマル」へのシフト:第2回 先進事例に学ぶ「ニューノーマル」へのシフト 銀行業界
- COVID-19による金融業界へのインパクトと先進事例に学ぶ「ニューノーマル」へのシフト 第3回 先進事例に学ぶ「ニューノーマル」へのシフト〜証券・保険業界
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- 異業種連携による新たなビジネスチャンス獲得のための要諦とは:第2回 異業種による金融参入事例〜MarCoPayの実現に向けた日本郵船の取り組み
- 異業種連携による新たなビジネスチャンス獲得のための要諦とは:第3回 異業種による金融参入・連携における成功実現の要諦
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- 保険イノベーションの最新動向 〜EFMA受賞イノベーションから見た次なる一歩とは:第2回 保険会社が取るべき次なる一歩
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- 欧州デジタルバンキング、何が成否を分けたのか。そこから学ぶ日本への示唆とは:第2回
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- 2023年の金融業界を占う。不確実な世界で持続的な成長と新たな価値創造を実現するための注力テーマ
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- アトム(現実)とビット(仮想)の融合が始まった。テクノロジービジョン2023から世界の向かう先を知る
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- Qorus Innovation in Insurance Awards 2024レポート。保険イノベーションの現在地と今後の展望を考察
今年、アクセンチュアが発表した世界のテクノロジートレンドに関する最新の調査レポート「Accenture Technology Vision 2023(テクノロジービジョン2023)」では、「アトムとビットが出会う時 – 新たな現実世界の礎を築く」と題し、企業が今まさに事業の再創造を加速させようとする中で、現実とデジタルの融合を促すテクノロジーのトレンドを定義しました。
第59回目となる今回の金融ウェビナーでは、テクノロジービジョン2023をベースに、アクセンチュアで先端技術の日本統括を担当している山根圭輔が講演を行いました。
現実(アトム)と仮想(ビット)がなめらかに融合を始めた
まずは2022年の内容を振り返ります。テクノロジービジョン2022では「メタバース連続体」を大きなトレンドとして取り上げ、仮想と現実の間が曖昧になっていく点に言及しました。
仮想と現実の融合について、デジタル世界ではパーソナライゼーションや自動化が進んでいますが、現時点ではまだ現実世界との分断があります。つまり、最後にして最大のフロンティアが現実世界である、とも表現できます。
仮想と現実が「なめらかに融合する」世界の実現を支えるのは、近年の技術の進化です。センサーやデバイスの進化、生成AIの進化などにより、技術の力で押し切れば、仮想と現実を違和感なく融合させることは不可能ではなくなりました。
仮想世界と現実世界がそれぞれ同じくらいの情報量を持ち、なめらかに融合するという世界は着実に近づいてきています。この融合が実現すれば、十人十色の顧客体験どころか、一人十色と呼べるほどの究極のパーソナライゼーションも可能になっていくでしょう。
すべての基盤となるデジタルアイデンティティ
プロローグとしてテクノロジービジョン2022のトレンドと昨今の技術進化を紹介したところで、ここからテクノロジービジョン2023の内容に入っていきます。テクノロジービジョンでは以下の4つのテクノロジー・トレンドが提言されましたが、今回のウェビナーでは前半の3つにフォーカスして講演を行いました。
最初のトレンドは「デジタルアイデンティティ(Digital Identity)」です。
デジタルIDは古くて新しい話であり、昔からIDの重要性は認識されてきました。しかし、いまだにトレンドであり続けているのは、それが変革の困難なテーマでもあるからです。
現在、多くの人々はサービスごとに複数のIDを持ち、そのデータは企業や行政に囲い込まれた状態にあります。そうではなく、すべての個人が生まれながらに固有のIDを持ち、それを企業や行政が使うという「ユーザー起点のID生成」をめざすべきです。
理想を言うは易しで、実現困難な世界に思われるかもしれませんが、実は既にインドでは具現化しています。2009年時点で大多数の国民に金融サービスが届けられておらず、IDのない国民も大半でした。
そこでインド政府は、「India Stack」というデジタルID基盤の構築に取り組みます。最初に着手したのは「Aadhaar(アダール)」というデジタルIDの発行であり、日本のマイナンバーにも近い仕組みですが、生体情報もセットでデジタル化している点が特徴です。
そして、このデジタルIDをAPI経由で公開することで、企業はそのIDを利用することが可能になります。現在、アダールによって、ほぼすべての金融機関において約10分で本人確認手続きができるようになっていますが、ポイントは各企業がeKYCの仕組みを作る必要がないということです。*eKYC:electronic Know Your Customerの略称。オンライン上で身元確認を完結する仕組み。
現在では、インドのスタートアップ企業の約84%がアダールを使って自社サービスを提供しているなど、圧倒的にサービスの規模が拡大しています。
データを独占せず、透明性を保つことが競争優位になる
2つ目のトレンドは「私たちのデータ(Your data, my data, our data)」です。
データ利用では「透明性」というキーワードが重要になります。データの独占や不透明な利用からの脱却は、今や競争優位にも直結する重要な課題となっています。
透明性を担保するということは、APIによるデータ公開を指しています。APIによって様々なデータを公開することで、個人にとっても、企業にとってもベネフィットになるという考え方です。
そして、ここでもケーススタディとしてインドのIndia Stackが挙げられます。India Stackの「Account Aggregator」は自分のデータを共有する際に共有する範囲や条件の同意を付与する仕組みであり、これによりスムーズな融資の実現につながります。
こうした仕組みは、最先端の技術が必要不可欠なわけではありませんが、仮想と現実をなめらかにつなぐための非常に重要な基盤になっていきます。
DXを基盤にしたAI Transformationが起こる
3番目のトレンドは「一般化するAI(Generalizing AI)」です。
仮想と現実のなめらかな融合において重要なキーが生成AIです。生成AIを活用して現実世界とコンピューティングの間をなめらかに融合させるUX革命はAIX(AI Transformation)と呼ばれます。
今までDXの文脈でデジタルツインと呼ばれていたものは大雑把なロジックであり、たまたま検索しただけのキーワードに関連する広告が表示され続けるなど、現実世界の事象としては、決して良い体験にはつながっていませんでした。
しかし今後は、より高度なロジックと生成AIにより、文脈に応じた「一人十色」のコミュニケーションが可能になっていきます。
ただし、誤解してはならないのは、DXに意味がないわけではなく、むしろDXの基礎があることでAIXが初めて可能になるという関係性です。あらゆる企業活動をデジタルデータとして蓄積し、デジタルツイン化しているからこそ、そこに知性=AIを組み込みことが可能になります。
生成AIは人類の「学び方」を変える可能性もある
しかし、生成AIが本当にユートピアをもたらすのかというと、課題もあります。
課題のひとつは、本当に生成AIを使いこなせる人はどれだけいるのか、という点です。以下は日本とアメリカでの生成AIの用途を比較したグラフですが、アメリカではアイデアの生成といった思考における「壁打ち」の用途が多い一方で、日本では答えを聞く用途が多くなっています。
しかし、生成AIには、知らないことも知っているかのように答える、という性質があります。ある分野の熟練者であれば、AIの回答を最初から鵜呑みにしないという態度が取れますが、未経験者や初学者が生成AIを単純に利用するのは容易にディストピアにつながります。
AIを使いこなせる人はビジネスの世界ですぐに頭角を現すようになり、一方でAIの結果を鵜呑みにする人は淘汰されていくことで、格差はますます広がっていくでしょう。
それでは、ディストピアの懸念をクリアしながら、スキルや経験が未熟な社員はどのように生成AIを活用していくべきなのでしょうか。例えば、個別指導用AIボットのように、「AIから学ぶ」という方法です。今までの人類の歴史では、学びのやり方には「人から学ぶ」「文字や動画から学ぶ」という2つの手段がありましたが、生成AIは第三の学び方になる可能性があります。
アトムとビットが融合したサービスを提供する存在は、必ず現れる
今回のウェビナーで紹介した内容については、部分的にというよりも、すべてを取り込んでくる企業がいずれ登場するでしょう。……いえ、たった今「企業」とは言いましたが、アトムとビットがなめらかに融合したサービスを提供する存在というのは、もはや企業なのかどうかもわかりません。
さて、本レポートでは、テクノロジービジョン2023をベースにした第59回金融ウェビナーの講演内容を抜粋してお伝えしてきました。このレポートで語りきれなかった内容はオンデマンド版から無料視聴が可能です。具体的なデータや事例、日米のAI用途の違いは「ドラえもん」にヒントがあるのではという仮説が語られた質疑応答などもご覧いただけますので、ぜひご視聴ください。
今回のウェビナーでは、金融業界の外部へと目を向け、最新の顧客体験の創造に取り組んでいる事例を紹介しました。本記事の内容は、オンデマンド視聴可能なウェビナーでより詳しく紹介しております。ハンズオン資料のご提供ほか、豊富な図版を交えた説明、視聴者からのQ&Aを含む約60分の映像コンテンツとなっておりますので、ぜひご視聴ください。
アクセンチュア金融サービス本部ウェビナー第59回のご視聴はこちら。