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さまざまな産業で生成AIの導入や活用が進み、事業成長への本格的なコミットが求められるようになっています。金融業界においても生成AIの活用は急速に広がっていますが、特に注目したいのがマーケティング領域への適用です。
金融業界のマーケティングは、業界特性もあり他業界に比べて遅れているといわれることが多かったのですが、生成AIの活用によって今までの均一な手法から脱却し、さまざまなステージの顧客に対してパーソナライズされた顧客価値を提供する新しいマーケティング戦略が実現できる可能性が生まれてきています。
今回の金融ウェビナーでは、デザインやマーケティングの専門部隊であるアクセンチュア ソングから3名のエキスパートを招き、生成AIによって実現できる“超高速”マーケティングについて解説を行いました。
金融業界におけるマーケティングの「負の連鎖」
はじめに金融業界が抱えるマーケティングの課題を見ていきます。以下は金融業界の課題を列記した図であり、金融商品特有の分かりにくさや堅苦しさ、顧客の金融リテラシー不足、長年変わっていない営業モデル、縦割りの組織風土などが主な課題として挙げられます。
また、マーケティングの仕組みが十分ではなく成功事例が生まれにくい、そして成功事例がないから仕組みも整わない、という負の連鎖も起きています。
こうした課題に対して貢献できるのが、アクセンチュアの提案する超高速マーケティングです。
顧客を理解し、対話を重ねる超高速マーケティング
多くの金融機関は顧客一人ひとりに寄り添ったきめ細かいマーケティングを行うには人的リソースが足りず、マス広告に依存せざるを得ない課題を抱えています。ですが、金融商品の特性上、マス広告では魅力を訴求しにくいという問題もあります。
そこで、マス広告での認知形成に終止する従来のマーケティングから脱却し、超マイクロマーケティングを積み重ねて、一人ひとりの事情やインタラクションに“超高速”で即座に呼応し、顧客との関係性を深化させながらLTVを高めようというアプローチが超高速マーケティングです。
実は、超高速マーケティングは新しい概念ではありません。かつて日本に存在した超高速マーケティングの実例としてウェビナー内で参照されたのが、某国民的TVアニメに登場する“酒屋”のキャラクターです。何気ない日常会話の中で顧客の状況やニーズを深く理解し、ライトタイミングで最適な商品を提案しながら、ファンをつくっていく。これは、まさしく究極のマーケティングの姿だといえます。
ですが、このようなマーケティングモデルは、ライフスタイルの多様化、企業の効率性の重視、都市部への人口集中などのさまざまな要因から、今ではほとんど姿を消してしまいました。
さて、再び金融業界に話を戻すと、複雑な金融商品だからこそ、一方通行的な情報提供ではなく、顧客との対話が重要です。
とはいえ、先述のアニメの“酒屋”のように、一人ひとりの顧客を深く理解し、顧客の文脈に合わせて、顧客の言葉で対話することは容易ではありません。
こうした対話を実現するには、まず一人ひとりの事情に即座に呼応するための「スピード」、そしてシナリオやコンテンツを圧倒的量産する「バリエーション」が不可欠です。また、金融商品は高額でリスク性も高い商品も多いことから営業員の重要性が大きく、超高速マーケティングが営業員を適切にサポートできるかどうかが実ビジネスの成果に直結します。
そして、これらを解決する手段が生成AIであり、End to Endのプロセス全体に生成AIを組み込むことで超高速マーケティングが実現されます。
事実、既にアクセンチュアではプロセスレス・シナリオレスの「Conversional AI」を複数プロジェクトで実装中であり、超高速マーケティングの実現は間近に迫ってきています。
超高速マーケティングが金融業界にもたらす変革
超高速マーケティングは、金融業界の抱える課題に対して、具体的にどのように貢献できるのでしょうか。
上記の図は、冒頭で紹介した金融業界のマーケティングの課題と、超高速マーケティングの貢献余地を整理したものです。
金融商品特有の分かりにくさや堅苦しさ、顧客のリテラシー不足から来る不安や契約の面倒臭さ、何十年も変わっていない営業モデルなど多くの課題がありますが、超高速マーケティングはその大半の課題解決に貢献できる可能性があります。
また、組織風土において、仕組みがないから成功事例が生まれない、成功事例がないから仕組みが変わらないといった負の連鎖が生じている場合、特定領域を切り出してCoE型で集中的に検討・構築・実行を行う、または外部のプラットフォームを活用してクイックに仕組みを導入するといったアプローチがあります。
これらの状況を踏まえ、ウェビナー本編では業界内で取り組みが進んでいる企業のステータスを例示しながら、超高速マーケティング実現に向けたチェックリストを紹介いたしました。チェックリストをご覧になりたい方は動画版をご視聴ください。
本当に必要なマーケティングが生成AIによって実現可能に
最後に従来のマーケティングと超高速マーケティングの違いを整理すると、従来のマーケティングは「一方向/マス向け/一律的」であったのに対して、超高速マーケティングでは「双方向/一人十色/本当に必要な情報を提供する」という違いがあります。
そして、今までは企画から営業、効果測定、改善まで長い時間をかけて行っていた一連のプロセスが一瞬に圧縮されることも超高速マーケティングの大きな特徴です。また、今までは人がマーケティングのプロセスを担っていましたが、今後はAIがマーケティングの基本的なプロセスを担い、必要な時に人を呼ぶという関係性に変わるでしょう。
このように超高速マーケティングは今までのマーケティングとまったく異なるものですが、先述のように真新しい概念というわけではなく、顧客を理解して対話を重ねる超高速マーケティングこそが本当に必要なマーケティングのあり方ともいえるでしょう。
今までは技術面やリソース面から実現困難だったものが、現在は生成AIの登場と発展によって実現間近になっているのです。
さて、本レポートでは概要をお伝えしてきましたが、ウェビナー本編では超高速マーケティングの詳細な内容や具体的なユースケースなども解説しています。詳しくご覧になりたい方は無料で視聴可能な動画版をぜひご覧ください。