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2025年初となる今回の金融ウェビナーでは、新年特別企画として銀行・証券・保険業界における2025年の注力テーマを紹介いたしました。
データ活用と生成AIの進化によってデジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に加速を続ける中で、金融業界はどのようなテーマに注力して顧客への提供価値を向上させるべきなのでしょうか。金融サービス本部統括本部長の中野のファシリテーションのもと、銀行統括の宮良、証券統括の早川、保険統括の林という3名がそれぞれの業界について解説を行いました。動画版とあわせてぜひご覧ください。
銀行業界:AIバンク、再編の加速、モダナイゼーション
まずは銀行業界から見ていきます。近年のプロジェクトの動向や経営層の方々とのディスカッションを通じて、以下5つを2025年の注力テーマとして整理しました。
この中からいくつかのテーマを深堀っていきます。まず「高コスト構造の壁」を乗り越えるための「働き方改革×AI」に関しては、アクセンチュアが内部で実施しているAIバディが一例であり、リサーチや提案書作成の自動化が可能になっています。2025年はAIを活用した働き方改革がより本格化する年になるでしょう。
次に「業務改革×AI」は、銀行業務自体にAIを埋め込み、融資の稟議作成やお客様の応対、リスクモニタリングなどにAIを活用する取り組みを指しています。これらの事例もどんどん生まれており、スケールしていくタイミングに入っています。
そして「ビジネスモデル改革×AI」。インターネットバンキングやスマホアプリの台頭といった過去の歴史を踏まえても、AIバンキングが当たり前のものになる時代は間もなく到来します。
アクセンチュアもAIバンクの構想を進めています。その世界観は、AIが自分専用のパーソナルアドバイザーとなり、自律駆動型で金融行動を最適化してくれるようになるというもの。そしてラストワンマイルも含めてオペレーションが自動化し、金融機関を横断して手続きも低コストで行えるようになるという未来です。
また、銀行の再編もチャレンジの一つですが、ここで重要なポイントは再編とDXの両立です。従来は時間のかかる再編であっても、まずはフロントのデジタル改革を先行して実施しながら投資体力を捻出し、徐々に成長戦略への投資へとシフトしていくアプローチが考えられます。
最後に「レガシーの壁」を脱却するためのモダナイゼーションも銀行業界の大きなチャレンジです。勘定系システムなどの技術負債の一掃のためには、プログラム言語を書き直しながら基盤を移行する「リライト」というアプローチが最適解です。リライトの詳しいアプローチについてはぜひお問い合わせください。
証券業界:Web3との融合や事務オペレーションの高度化
証券業界の注力テーマの一つとして伝統的金融とWeb3の融合が挙げられます。この動きは既にアメリカで始まっており、早晩日本にも到来するでしょう。
2024年、仮想通貨を裏付け資産にしたETFが発行されて話題を呼びましたが、現実世界と仮想世界の融合は進展を続けており、特に現実世界の資産を裏付けにしたトークン化商品はRWA(Real World Asset)トークンとして注目を集めています。
証券業界のもう一つの注力テーマは「資産管理業務の高度化の必要性」です。近年では資産管理ボリュームや商品バリエーションが増加する一方、事務オペレーションの高度化がまだ十分に進んでいない現状があります。
事務オペレーション高度化のイメージとしては、究極まで自動化を進め、人間は例外的な問題が検知された時だけ対応するという考え方です。とはいえ一足飛ばしに達成できるものではなく、まずは属人化した現行業務の可視化、それから業務の構造化・標準化といった従来のBPR的なアプローチでステップごとに進めることが重要です。
そして高度化のポイントは、標準化した業務フローをオーケストレーションプラットフォームに構築し、STP(Straight Through Processing)化を加速させることです。業務フローを支えるオーケストレーションプラットフォームを導入することで、効率的かつ属人化を廃した業務を実現することが可能になります。
アクセンチュアはこれまでに培ったナレッジからバックオフィス業務の標準業務フローを備えた「AMBOT(Accenture Middle and Back Office Transformation)」というソリューションを提供しており、既にグローバル企業においてサービスレベル向上に向けた業務効率化を実現している事例も生まれています。
保険業界:AIドリブン経営とLTV経営
保険業界における経営上の「変数」としては、社会保障の低下リスクや実質所得の低下、災害の激甚化、サイバーセキュリティなどの新たなリスクの台頭、若者の保険離れなど顧客の変化が挙げられます。
こうした変化の波の中、ゼロベースでの業務・プロセスの見直しは引き続き行うべきですが、既に過去のウェビナーで紹介しています。そこで2025年は注力テーマとしてAIドリブン経営とLTV(Life Time Value)経営を取り上げました。
まずAIドリブン経営に関して、オペレーション領域においては生成AIによる「自動化」の影響を強く受ける一方で、保険の営業においては「強化」される領域も大きいとされています。生成AIを活用して業務を高度化する取り組みが重要です。
また、生成AIはマーケティングモデルも変えていきます。他業界では専門性の高い複数のAIエージェントが会話しながら自動的に広告やマーケティングを行うモデルも生まれています。将来的には、一人ひとりの生活者が自分のAIエージェントを持つ「生成AIネイティブ世代」の時代がやってくると想定されます。そうなれば個人のAIエージェントに向けた営業活動が必要になります。この話は少々近未来的な印象があるかもしれませんが、準備は欠かせません。
そしてLTV経営は「古くて新しい」テーマとも言えます。顧客のLTVを可視化することで、収益に貢献する活動に対して正しくガバナンスをかけることが可能になります。LTV自体は馴染みのあるテーマですが、これまでの考え方に加え、新たな着想としてはファネル横断で見てLTVの高い顧客や施策を優先するアプローチが求められます。
一つの商品だけで収益化を狙うのではなく、より全体的な視点に立ちながら収益に貢献する活動を見極めるということであり、介護や福利厚生などの周辺事業までリーチしながら、マスの顧客層に対して価値を最大化していくことが必要です。保険金や給付金を自社グループ内企業で利用してもらうなど「実物・サービス給付」的な動きとも関わってきます。顧客のLTVを見据えた打ち手はますます重要になっていくでしょう。
生成AIが「当たり前」になる時代はすぐそこに
今回の金融ウェビナーでは銀行業界、証券業界、保険業界の動向や注力テーマを解説しました。置かれている状況はそれぞれ違うとはいえ、生成AIを「当たり前」の存在として活用していく点では共通していることも確認できました。インターネットが普及してから数年後、そしてスマホが普及してから数年後には世界が大きく変わったように、まもなくAIが「当たり前」になる世界がやってくるでしょう。
さて、本レポートではウェビナーの要点を抜粋してお伝えしましたが、オンデマンドでご覧いただける動画版では具体的な事例や詳細な内容、Q&Aなども紹介しています。無料で視聴が可能ですので、ご興味をお持ちの方はぜひご覧ください。
今回のウェビナーでは、金融業界の外部へと目を向け、最新の顧客体験の創造に取り組んでいる事例を紹介しました。本記事の内容は、オンデマンド視聴可能なウェビナーでより詳しく紹介しております。ハンズオン資料のご提供ほか、豊富な図版を交えた説明、視聴者からのQ&Aを含む約60分の映像コンテンツとなっておりますので、ぜひご視聴ください。
アクセンチュア金融サービス本部ウェビナー第68回のご視聴はこちら。