金融サービスブログ    

このシリーズの記事一覧:

  1. 真の「生産性向上」と業務プロセス再構築、そして人の重要性海外先進事例に学ぶデジタル変革実現の鍵とは? ~ウェビナー
  2. RPAの要諦と次なるデジタル変革への挑戦 ~ウェビナー
  3. 「アンバンドル」から「社会構造変革」へ:日本におけるフィンテックの将来的可能性 ~ウェビナー
  4. 来たる“創造的破壊”の波に向けた、保険ビジネスのあり方とは ~ウェビナー
  5. デジタルウェルスマネジメントがもたらすアドバイスモデルの転換 _真の顧客本位の実現に向けて ~ウェビナー
  6. コーポレート領域でのデジタル技術導入による変革効果の限界と打開策–RegTechを中心とした効果創出の仕組みづくり  ~ウェビナー
  7. HUMAN + MACHINE:ビジネス変革における第3の波に日本企業はどう立ち向かうべきか ~ウェビナー
  8. ブロックチェーンは金融ビジネスをどう変えるか、何が可能になるのか~ウェビナー
  9. デジタル変革のあるべき姿 – 伊予銀行様DHDバンクを例に ~ウェビナー
  10. デジタル変革の鍵を握るCloud活用をどう進めるべきか – 金融業界における成功の要因 ~ウェビナー
  11. 真の顧客起点型ビジネスモデルの追求 –2つの主導権争いと鍵となるテクノロジーの展望~ウェビナー
  12. デジタルトランスフォーメーション(DX)における人材活用・リスキルの進め方とは~ウェビナー
  13. 顧客を知り、顧客に応え、顧客と共に育てるビジネス ー 2019年消費者動向調査を踏まえて ~ウェビナー
  14. Beyond RPA -RPAは期待した効果を出せたのか?これまでの総括と求められる次なる一手:第1回 RPAの特性と活用推進の鍵 ~ウェビナー
  15. BEYOND RPA -RPAは期待した効果を出せたのか?これまでの総括と求められる次なる一手:第2回 求められる次の一手と2つの方向性
  16. 第1回 グローバルのイノベーションにみる保険の新たな姿 _今だからできるサービスと日本への示唆~ウェビナー
  17. 第2回 グローバルのイノベーションにみる保険の新たな姿 _今だからできるサービスと日本への示唆~ウェビナー
  18. Bank4.0時代に向けた銀行変革 - “破”銀行、“創”銀行:第1回 Bank4.0時代の到来と国内金融機関への影響~ウェビナー
  19. Bank4.0時代に向けた銀行変革 - “破”銀行、“創”銀行:第2回 Bank4.0時代の“銀行”と実現に向けた鍵~ウェビナー
  20. 顧客価値と企業経営_Design Pivot 新しいデザインとの向き合い方 第1回 金融機関に求められる新たなビジネスデザイン~ウェビナー
  21. 顧客価値と企業経営_Design Pivot 新しいデザインとの向き合い方 第2回 新たなデザインとの向き合い方
  22. デジタルビジネスを加速させる次なるステージの組織運営と人材活用 _デジタルトランスフォーメーション(DX)のその先へ:第1回ディスラプションの進行と金融業界の現状~ウェビナー
  23. デジタルビジネスを加速させる次なるステージの組織運営と人材活用 _デジタルトランスフォーメーション(DX)のその先へ:第2回 変革へのロードマップ(1)オペレーティングモデル・シフト~ウェビナー
  24. デジタルビジネスを加速させる次なるステージの組織運営と人材活用 _デジタルトランスフォーメーション(DX)のその先へ:第3回 変革のロードマップ(2)リソース・シフトとワーク・シフト
  25. 守るテストと攻めるテスト:第1回 創造的破壊(disruption)の進行と金融業界の現状
  26. 守るテストと攻めるテスト:第2回 創造的破壊(disruption)の進行と金融業界の現状~“攻めるテスト”の要諦
  27. BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のその先へ _これまでとデジタル化時代における 今後のあるべき姿 :第1回 新たな市場環境とアウトソーシングのかたち
  28. BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のその先へ - これまでとデジタル化時代における 今後のあるべき姿 第2回 ― BPSのメリットと活用事例
  29. COVID-19による金融業界へのインパクトと先進事例に学ぶ「ニューノーマル」へのシフト:第1回 COVID-19のインパクトと『ニューノーマル』のかたち
  30. COVID-19による金融業界へのインパクトと先進事例に学ぶ「ニューノーマル」へのシフト:第2回 先進事例に学ぶ「ニューノーマル」へのシフト 銀行業界
  31. COVID-19による金融業界へのインパクトと先進事例に学ぶ「ニューノーマル」へのシフト 第3回 先進事例に学ぶ「ニューノーマル」へのシフト〜証券・保険業界
  32. 異業種連携による新たなビジネスチャンス獲得のための要諦とは:第1回 異業種連携の最新動向と金融サービスのポテンシャル
  33. 異業種連携による新たなビジネスチャンス獲得のための要諦とは:第2回 異業種による金融参入事例〜MarCoPayの実現に向けた日本郵船の取り組み
  34. 異業種連携による新たなビジネスチャンス獲得のための要諦とは:第3回 異業種による金融参入・連携における成功実現の要諦
  35. 保険イノベーションの最新動向 〜EFMA受賞イノベーションから見た次なる一歩とは:第1回 EFMAアワード受賞企業と保険イノベーションのトレンド
  36. 保険イノベーションの最新動向 〜EFMA受賞イノベーションから見た次なる一歩とは:第2回 保険会社が取るべき次なる一歩
  37. 筋肉質な経営体質に転換するための、聖域なきコスト削減 – リバウンドしない仕組みづくりとカルチャー変革
  38. 欧州デジタルバンキング、何が成否を分けたのか。そこから学ぶ日本への示唆とは:第1回
  39. 欧州デジタルバンキング、何が成否を分けたのか。そこから学ぶ日本への示唆とは:第2回
  40. 顧客体験を軸にしたビジネス変革 ~他業界に学ぶ顧客体験の追求と成長へのチャレンジ~
  41. 2021年の金融業界の展望 – 「ニューノーマル」を実現するために金融機関には何が求められるのか
  42. 「2025年の崖」を乗り越えるモダナイゼーションの現実的な施策とは その4 ~アクセンチュアの謎、なぜレガシーモダナイゼーションで選ばれるのか?
  43. データドリブン保険経営の要諦〜大同生命におけるビジネス・アナリティクス・クリエイティブ三位一体改革〜
  44. Capital Markets 2025 – 証券ビジネスの再創造に向けて
  45. Technology Vision 2021から読み解く日本の金融機関への示唆
  46. 日本初のデジタルバンク「みんなの銀行」は何を目指しているのか - 横田頭取・永吉副頭取をお迎えして
  47. 保険イノベーションの最新潮流~ Efma受賞イノベーションから見た最新事例と保険DXの将来像~
  48. 「パーパス起点」で金融機関はどう変わるのか ~ “Business of Experience(BX)”実現に向けた具体的な変革ポイント
  49. アウトソーシングの新潮流と人材戦略について
  50. 「事故のない世界」を目指して。イーデザイン損保の新たな自動車保険「&e アンディー」からパーパス起点の変革の意義を紐解く
  51. 2022年、金融機関の持続的成長には何が必要なのか。銀行・証券・保険の各業界のトレンドと展望を総括
  52. 銀行業界を牽引するグローバル大手銀行の戦略から、日本の金融機関への示唆を読み解く
  53. 岐路に立つ金融機関系システムは、10年後を見据えてどのように変わるべきなのか
  54. 金融機関のグローバル展開パターンを分析し、成功の要諦とシナジーの生み方を読み解く
  55. COVID19とは何だったのか。これまでの総括とこれからの予測、そして日本の金融機関への示唆
  56. メタバースは現実世界やビジネスをどう変えるのか。テクノロジー・ビジョン2022に寄せて
  57. 顧客ニーズの変化や手数料率の低下。証券リテール業界はどのように変わるべきなのか
  58. 保険イノベーションのグローバルトレンドと、今後起こりうる大きな変化。Qorus(旧Efma)受賞イノベーションから最新事例のご紹介
  59. 多様化するリスクに対し、日本の金融機関が取るべきデータドリブンなリスクマネジメントとは
  60. 顧客を「生活者」として捉え直す。真の顧客志向による顧客体験の最適化とマーケティングの変革
  61. 2023年の金融業界を占う。不確実な世界で持続的な成長と新たな価値創造を実現するための注力テーマ
  62. AI活用は意思決定の領域にまで拡大。金融業界におけるAI活用と「責任あるAI」の実現に向けて
  63. 金融機関におけるTalent Transformation(TX)の進め方
  64. イノベーションの潮流に変化の兆し。新興国のイノベーション事例から日本の金融機関は何を学べるのか?
  65. 社会実装が始まる量子コンピュータ。金融業界こそ量子コンピューティングを活用すべき理由とは
  66. ジェネレーティブAIが金融業界にもたらす巨大なインパクト。「AI社員」の活用事例も紹介
  67. コア領域こそ内製化を。DX全盛の今こそ金融業界のIT現場を取り巻く状況を知る
  68. アトム(現実)とビット(仮想)の融合が始まった。テクノロジービジョン2023から世界の向かう先を知る
  69. Qorus Innovation in Insurance Awards 2023の受賞イノベーションを解説。保険イノベーションの今後を占う
  70. “価値”そのものに着目した新たな変化の波。Web3の進化が金融業界にもたらす可能性について
  71. 【新年特別企画】銀行、証券、保険の各業界で生成AIの活用が本格化へ。2024年の金融業界を占う
  72. 生成AIが可能にする一人ひとりの顧客との対話。金融業界の多くの課題を解決しうる超高速マーケティングとは
  73. 保険契約管理業務をゼロベースで再構築。アフラック生命保険株式会社が全社横断で取組む「アフラック プロジェクトZERO」とは
  74. クラウド型統合融資プラットフォームnCinoが世界中で受け入れられている理由とは。融資事業のデジタル変革の道筋を考える
  75. Qorus Innovation in Insurance Awards 2024レポート。保険イノベーションの現在地と今後の展望を考察

2回(全2回)日本への示唆 デジタル活用を通じた更なる成長のために

前回のブログでは、Efma Innovation Award 2019で見られた応募企業の興味深い取り組みを、領域別にいくつかご紹介しました。今回は、保険分野で見られるこうした先進的取り組みを踏まえながら、日本の保険会社にもたらす示唆についてお話しします。

Efma Innovation Awardに見られる革新的取り組みは、日本の保険会社にどのような示唆をもたらすのでしょうか?まず最も重要なポイントは、新たなテクノロジーとイノベーションの波が、今までの保険のあり方を根底から覆し、既存の枠組みを全面的に変えてしまうわけではないという点です。自動車保険や生命保険をはじめとする従来型商品・サービスは今後も社会で重要な役割を果たし、将来的にも安定した需要を維持するでしょう。その上で、世の中の変化に伴い生じるリスクに対して革新的取り組みが創出され、新たな分野として保険化されていくというのが、現時点で最も可能性の高いシナリオとなります。

ただし、保険会社が現状維持に陥り、イノベーション推進を怠れば、競争が激化する市場の中で生き残れないことは言うまでもありません。デジタル活用を進め、長期的な成長につなげるため、保険会社は今後どのような領域でイノベーション適用に取り組むべきなのでしょうか?次の6つの領域を特に重要と考えています。

イノベーション適用を進めるべき6つの領域

1. ハイパーレレバンス体験の創出

聞き慣れない言葉かもしれませんが、顧客とのつながりをさらに深め、より高度な体験につなげる取り組みを意味します。5Gの登場などによって通信スピードが加速する中、企業・顧客間の情報のやり取りは今後さらに増加していくでしょう。こうした環境のもと、保険のリスクをIoTやテクノロジー(モバイル・データ・AI)、エコシステムのパートナーと結合させ、単なる商品から体験・サービスへと転換することが重要になります。

2. 新たな収益プールの獲得

これまで保険化が難しかったありとあらゆるリスクを、新たなテクノロジーを活用しながら商品化・展開し、従来なかったような市場を創出していく取り組みです。エコシステムのネットワーク効果を有効活用して、既存の保険商品・サービスにプラスアルファを加え、非従来型の販売チャンネルを通じて新たなバリュープロポジションを提供すれば、保険会社にとって極めて重要かつ魅力的な領域となるでしょう。

3. マーケティングのデジタル化

デジタルマーケティングの能力を高め、セールスチャンネル管理を高度化することで、収益・生産性を向上させる取り組みです。デジタルタッチポイントと物理チャンネルのシームレスな統合を通じてデジタル化を推進する一方、販売代理店は人の創造力を活用したアドバイザリーサービスへ注力することで付加価値を高めるなど、デジタル・人それぞれの強みを活かしたマーケティング戦略の重要性が高まるでしょう。

4. データ主導の企業になる

これまで保険会社の多くは、既存の保険対象の枠組みの中で、商品設定の工夫や料率の削減などを行い差別化を図ってきました。しかし外部パートナーとの連携やエコシステムの活用が加速する今後は、社内外のデータを競争力の源泉としてマネタイズする、あるいは新たな分野で保険化・サービス化を進めるといった取り組みが不可欠となります。

5. New Technologyを用い徹底的に省力化されたオペレーション

既存の保険商品・サービスが今後も残っていく可能性が高いことは先ほどもお話しました。しかしその開発・提供プロセスが、現状維持のままで良いわけでは決してありません。テクノロジーを活用しながら、コアな保険プロセスやオペレーションの徹底的な見直し・省力化を図り、インテリジェントオペレーションの実現に取り組むことが極めて重要となるでしょう。

6. リ・アーキテクト

これまでの業務体制は、アプリケーションが分断されたレガシーアーキテクチャーをベースとして成り立っています。しかし、上で紹介したようなイノベーションや新商品・サービスの開発を効果的に進めるためには、新たなアーキテクチャーの導入が不可欠です。新旧の仕組み・プロセスを完全に切り離すデカップリングを推進する、あるいは新たなプラットフォームを作り直すなど、具体的なアプローチは様々なパターンが考えられますが、今後はリ・アーキテクトの発想に基づく改革の取り組みが求められることは確かです。

デジタル革命が、世間で大きな注目を浴びるようになってから5〜6年が経とうとしています。その当時はデジタルツールの活用を、業務の省力化・生産性向上・販売促進といった文脈で捉えられることがほとんどでした。また保険という業界も、ともすれば無味乾燥で後ろ向きなイメージで見られてきたことは事実です。しかし第1回で紹介した受賞例を見ると、柔軟な発想で新たな保険の姿を提示するイノベーティブな取り組みが非常に目立ちます。今、保険の世界に新たな流れが生じつつあるのです。

この変化に対応し、既存の枠組みに囚われない発想で革新的な商品・サービスを創出することは、決して容易ではありません。しかし、未知の領域に進んで試行錯誤を繰り返しながら新たな市場を開拓・確立した企業だけが競争をリードできる。そういう時代が確実に迫りつつあります。「他社の成功事例を何とか応用できないか」と考えた時点で、生き残りをかけた競争に後れをとっている可能性が高いのです。保険会社の関係者の方々1人1人が、これまでヘッジされていないリスク、実現されていないアイディア、利便性の高い商品などを消費者の視点からどんどん創出し、保険商品として進化させていけば、長期的な成長につながるだけでなく、ひいては保険業界の魅力を高めることにもなるのではないでしょうか。

私たちが講演した第15回のウェビナーでは、保険業界におけるテクノロジーの最新トレンド、EFMA Innovation in Insurance Awardの受賞事例、イノベーション適用を進めるべき領域などについて、興味深い事例と動画を交えながらさらに詳しく解説しています。