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2023年の大きなトピックは何と言っても生成AIでした。生成AIは、あらゆる業界や職種に甚大なインパクトをもたらすことが予想されており、各業界で既にさまざまな検討が進められています。2024年は生成AIの浸透と活用が一段と進展する年になるでしょう。

さて、今年1回目となる金融ウェビナーは新年特別企画として、「2024年の金融業界の次なる一手 – 成功への新たな戦略と展望」というタイトルで、金融業界の動向と今後について、解説やディスカッションを行いました。銀行、証券、保険の業界ごとの注力テーマと生成AI活用の方向性を紹介いたしましたので、動画版とあわせてぜひご覧ください。

銀行業界:スーパータンカー改革とスピードボート改革 

まずは銀行業界です。伝統的な銀行は信頼性や安定性に長けた「タンカー」に例えられますが、一方で燃費や機動力には課題があるともいえます。

そこで、今後の持続的成長のためには、“スーパータンカー改革(既存事業・既存収益源の抜本的な生産性向上)”ど“スピードボート改革(新規事業・新規収益源へのチャレンジ)”の2つの変革が必要となります。

上記の注力テーマの中から、本レポートでは「AIバンキング」の「Web3金融」のパートを抜粋してご紹介します。まず生成AIの活用について、いくつかの銀行は以下の表のSTEP1「環境構築」を終えたフェーズにあります。行員の方々が生成AIを利用できる環境を作り、いよいよ本格的に業務に組み込もうとしているのです。2024年は銀行のあり方を考え直す年になるでしょう。

次に「web3金融」です。web3の主要なポイントは、個人によるデジタルアセットの根源的な所有が可能になるということです。プラットフォーマーによる中央集権的なweb2.0から、web3ではブロックチェーン技術によってトークン経済圏の台頭と分散化が進みます。こうした世界観の中で、銀行が信頼を保証していた時代が変わり、「Bankless(バンクレス)」の世界がいよいよリアリティを帯びてきます。

このように、Web3は銀行ビジネスに大きな影響を及ぼす可能性がありますが、一方で拡大するマーケットの波をとらえるチャンスでもあります。Web3に限定した話ではないものの、銀行業界において、アドバイザー型ビジネスへのシフトはより一層求められるようになるでしょう。

証券業界個人投資家の拡大とリテール領域におけるAI活用 

次に証券業界です。世界の資産運用残高と収益では個人投資家の占める割合が年々増えています。日本でもNISAiDeCoによって個人投資家の裾野は確実に広がっていますが、NISAiDeCoは口座管理手数料を徴収していないため、証券会社にとっては、これらの動きをどう収益につなげていくかが重要なポイントになります。

証券業界の2024年の注力テーマは、「代替収益の確保」と「サービス拡大と低コスト化の両立」の2点です。

まず「代替収益の確保」の点で先行する米国の事例を参照すると、2019年、チャールズ・シュワブが手数料を無料化にしたことで競争が激化、リテール証券業界の大型再編につながりました。

そしてモルガン・スタンレーはウェルスマネジメント部門を強化するとともに、金融機関として初めてアドバイザリー業務に生成AIを適用。内部文書を生成AIに学習させ、ファイナンシャル・アドバイザーの業務をサポートしています。ウェルス層にファイナンシャル・アドバイザーがついてサービスを提供していくというビジネスの中で、生成AIがアドバイザーの生産性に寄与する働きをしています。

これはファイナンシャル・アドバイザー向けのAI活用の例ですが、技術面だけを考えれば、将来的には顧客に対してもAIを活用したサービスを直接提供できるようになるでしょう。こうした顧客向けのAI活用で重要なことは、異なるタッチポイントであっても一貫性のある体験・サービスを提供するということです。アクセンチュアが提供する「AI Hub プラットフォーム」のように、全体を統括するAIプラットフォームの必要性が出てくると考えられます。

保険業界:基幹産業の変革と個人マネーの活発化への対応 

最後に保険業界の動向を見ていきます。

まず保険業界の周辺環境として、日本の基幹産業である自動車業界ではEVへのシフトが進んでいます。

通信業界やエネルギー業界でも技術革新が進んでおり、常時インターネットにつながっている自動車や、整備工場・解体業者のスキル再構築、充電ステーションの拡充といった変化が生まれてくるでしょう。

このような変化を受けて、保険会社には新たなサービスの創出が求められます。今まで、保険業界は事故や災害に対する保障によって産業の発展をサポートしてきましたが、これからはそもそも事故や災害による被害を発生させないような価値創出も重要になります

そして、もうひとつの大きなトレンドとして、生成AIは保険業界にも大きな影響を及ぼします。アクセンチュアのリサーチによれば、保険業界は業界別で2番目に大きな影響を受け、62 %の業務でAI活用余地があると試算されています。全業界の中でも、保険会社は率先して新技術を利用することが肝要であるといえます。

現在、多くの企業が生成AIを用いたPoCなどに取り組んでいますが、回答の精度やセキュリティなどの点でまだ多くの課題がある、という声が聞かれます。ですが、それは企業のデータ整備の問題であることも多く、生成AIそのものの問題ではない場合もあります。保険業界の場合、事務の量自体が増えている一方で、インフレと人件費の増加、人材獲得の難化といった構造的な問題があるため、その点でも新技術の活用は不可欠です。

このように新しいサービスを創出していく必要がある状況の中、これからの保険業界では各ファネルの取り組みに加えて、顧客のLTV(顧客生涯価値)を高めるという視点が重要になります。LTVの高い顧客や取り組みを見極めること収益を最大化するというLTV経営を行っていくことがますます必要になっていくでしょう。

すべての業界に共通する注力テーマは生成AIの活用 

ここまで銀行業界、証券業界、保険業界の動向や注力テーマを見てきました。それぞれに固有の状況や課題がありますが、共通しているのは生成AIの活用です。冒頭に述べたように2024年は金融業界で生成AIの活用が本格化していく年になると見込まれます。

さて、本レポートではウェビナーの要点を抜粋してお伝えしましたが、オンデマンドでご覧いただける動画版では具体的な事例や詳細な内容を紹介しています。無料で視聴が可能ですので、ご興味をお持ちの方はぜひご覧ください。

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