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2022年はロシアのウクライナ侵攻、世界的なインフレ、記録的な円安などにより、不安定な市況となりました。一方で社会やビジネスの変化はさらに加速し、基幹システムの改革というテクノロジーの問題もいまだに立ちはだかっています。

2022年までの状況を踏まえ、2023年の金融業界において持続的な成長と新しい価値創造を実現するためには、どのようなテーマに注目すべきなのでしょうか。今回の金融ウェビナーは新年特別企画として、「2023年の金融業界で注力すべきテーマとは~持続的な成長と新しい価値創造に向けて」というタイトルを掲げ、銀行、証券、保険それぞれの業界における2023年の注力テーマについて紹介いたしました。

銀行異界:変革の支援から、変革の請負へ

まずは銀行業界について邦銀の状況から見ていきます。

日本と類似の金利環境下にある欧州の銀行と、成長率を比較してみます。ここでの成長率とは収益増加率と経費増加率の差分として定義していますが、邦銀では経費増加率が収益増加率を上回っているケースが多く見られます。成長率を高めるため、コスト削減は喫緊の課題であるといえるでしょう。

一方で、成長を実現しているグローバル銀行の特徴は、「大胆な取捨選択」を行っていること。大胆なコスト削減により得られた原資を、既存事業の効率化や高度化といった収益性向上のための投資に向け、同時に将来投資も実施しています。

日本の地域銀行については、チャネルの見直しによるコスト削減や、デジタル・ディスラプトによる収益性の改善といった変革が求められているほか、地域金融機関特有のテーマとして地域DXが挙げられます。自治体と協力して地域DXを進めていく上では、地域銀行がリーダーシップを取っていくことが重要です。

また、銀行共通のテーマとしてはテクノロジーが挙げられます。顧客体験が重視される時代において、ビジネス要件は基幹系の外にあるデジタルプラットフォームで充足。データの価値がますます大きくなる中、システムの価値はSoR(記録重視)からSoE(つながり重視)へ。そしてオープンバンキングの流れが到来している中、基幹システムは基調や決済に特化したシンプルかつライトなものに変わっていくことが求められます。

 

そして非常に重要なテーマが変革人材の獲得です。事務系や管理系の業務がテクノロジーで代替されていく中、2030年にはデジタルを活用して変革を推進する人材が銀行全体のうち3〜4割を占めるべきだと言われています。もちろん簡単な道のりではありませんが、グローバルでは10年がかりで組織構造を変えている銀行の事例もあり、変革人材への訴求や人事制度、働き方の改革などは長期的な視座に立って進めていくテーマといえます。

ここまで見てきた変革テーマについて、アクセンチュアは個別のサービスを提供するだけでなく、業務を受託した上で、生産性の向上、新規事業の推進、人材のリスキルを行い、バリューアップ後にお客様にお返しする変革プログラムを提供しています。

「変革の支援」ではなく、「変革の請負」を担える存在として、お客様の経営変革を一緒に進めていきたいと考えています。

 

証券業界:収益構造変革とデジタルアセットビジネスの発展

次に証券業界の状況を見ていきます。

まず主要な証券会社の業績を見ると、投資銀行部門、リテール部門の不調によって経常利益は大きく減少しています。成長率は2021年対比でマイナスになり、インフレ抑止に向けた金融政策、ロシアによるウクライナ侵攻の影響を受け、各種指標は景気後退局面を予測しています。ただし、世界的に失業率は低く、消費者の購買意欲は高いなどのポジティブなデータもあり、予測は難しいというのが実情です。

 

景気後退の懸念が膨らむ一方で、貯蓄から投資への流れも浸透しています。確定拠出年金は資産総額が増える中で、企業型・個人型ともに投資信託・金銭信託の割合が拡大しています。つみたてNISAも口座数が増加しており、特に20〜30代の投資未経験者が多いことから、長期投資の芽があると見ることができます。

これらの状況を受けて2023年に取り組むべき事項としては、まず収益力強化に向けた効率化・コスト削減が挙げられます。IT中心のコスト削減は多くの企業が取り組んでいますが、それだけではコスト削減が限界に近づいており、今後はビジネス面を巻き込んだ対応が必要になるでしょう。

また、フロー型ビジネスからストック型ビジネスへの変革も重要な取り組み事項です。プロダクトアウト型からアドバイス型へのシフトを進めつつ、負債を含めた総資産へのアプローチが必要になります。社会貢献や環境問題の解決といった新しい顧客ニーズに対応できるよう、商品・サービスを拡充することが求められます。

 

デジタル証券を含むトークン活用による投資選択肢の拡大も取り組み事項のひとつです。日本では不動産を裏付け資産とした不動産セキュリティートークン(ST)が主流で、発行額は2021年対比で約5.5倍の201.6億円と大幅に拡大しています。なの、現在の不動産STの発行額は証券化不動産の0.1%にも満たない規模であり、今後の拡大が期待されます。

 

トークンビジネスの基盤としては、アクセンチュアが提供しているトークンの発行・取引・流通プラットフォームである「axia(accenture token exchange infrastructure)」が活用可能です。「axia」は第三者対抗要件を具備し、高い拡張性を有した将来性のある基盤です。

 

保険業界:2030年の社会を見据え、デジタルを活用した収益力の改善を

最後に保険業界です。まず2030年の社会像を考えると、団塊世代からX・Y世代、Z世代への世代交代が進み、デジタルネイティブ世代への相続ラッシュが起こります。また、高齢化が進み、認知症患者は全人口の7%を占めることになると試算されています。労働人口が減少し、公的保障が圧迫されることから、「自助」の動きはますます進んでいくでしょう。

そして今後、保険業界において保険料の増加が見込まれる領域としては、気候変動や自然災害への対処・緩和・適応、EV/FCV、IoTセキュリティーなど「安全な第四次産業革命」が挙げられます。

このような社会変化とリスクの変化に対し、保険業界はどのように収益力を高めていくべきでしょうか。現行のビジネスを維持しながら新規事業へのWISE PIVOT(賢明な事業転換)を行うことが肝要ですが、そのためには販売チャネルごとにバラバラな仕組みになっている現状の構造を見直し、エンド・ツー・エンド&ゼロベースで事業費構造の改革を行うことが必要です。

 

事業費構造の変革においてアクセンチュアが推奨しているのは、人間が中心となる「デジタル・ヒューマン・デジタル(DHD)」のアプローチです。DHDでは、人は人にしかできない付加価値を追求しつつ、デジタル・AIを活用して既存のアセットを最適化していきます。アクセンチュアはDXに関する様々なソリューションを保有しており、変革のサポートを行っています。

 

 

新規事業という観点についても、まず取り組むべきは既存事業の収益力強化であり、そこで得られた成果を将来の新規事業につなげていくプロセスが重要です。上述のエンド・ツー・エンド&ゼロベースでの構造改革、DHDによるコア事業のDXを行った上で、新規事業に取り組んでいくことになります。

2023年は、改めて変革に向き合うべき年に

さて、ビジネス、コスト、IT、人材という4つの観点に分けて、2022年までの流れ(FROM)と2023年以降のトレンド(TO)をまとめると、以下のようになります。既に重要性が叫ばれていたテーマもありますが、不確実性がより高まる中、2023年はこれらのテーマに対して改めて取り組むべき年になりそうです。

今回のレポートでは、銀行、証券、保険それぞれの業界の状況と2023年の展望について概要をお伝えいたしました。ウェビナー本編では、具体的な数字やアプローチを交えた詳細な内容や、実際の事例なども紹介しております。無料で視聴できるオンデマンド版もご用意しておりますので、ぜひご視聴ください。

今回のウェビナーでは、金融業界の外部へと目を向け、最新の顧客体験の創造に取り組んでいる事例を紹介しました。本記事の内容は、オンデマンド視聴可能なウェビナーでより詳しく紹介しております。ハンズオン資料のご提供ほか、豊富な図版を交えた説明、視聴者からのQ&Aを含む約60分の映像コンテンツとなっておりますので、ぜひご視聴ください。

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