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2023年には生成AIの進化が大きな注目を浴びましたが、主要なテクノロジートレンドのひとつであるWeb3は、一過性のトレンドや投機的な動きに留まることなく、社会や企業に新たな価値を与えるものです。
今回の金融ウェビナーでは「金融業界の未来を拓く~Web3の進化による新たな可能性」と題し、Web3活用の最前線で働く2名の有識者を招き、Web3が拓く新たな世界や事例、金融業界での可能性を語りました。
Web3が拓く新たなフロンティアとは
アクセンチュアでは、Web3のみならず、メタバースや生成AIもひとつの連続したトレンドだと認識しています。
その背景として、人々がWeb上で過ごす時間は長期化しており、“インターネット・ネイティブ”なコミュニティや体験が日々生成されています。そうした中で、インターネット上で過ごした時間や体験に価値を持たせ、オーナーシップを持ちたいと考えるのは自然な流れです。
そして以下の図のようにデジタル上の国家というメタファーのもと、インターネット上の人々やコミュニティを“国民”、スペースやコンテンツを“国土”と考えると、トークナイゼーション(トークン化)やブロックチェーンは“社会経済基盤“と表現できます。
ところで、Web3にはDAOやNFTなども含まれ定義が難しいとされていますが、その中心にあるのはトークナイゼーションです。物質よりも情報に着目したのがデジタライゼーション(デジタル化)だとすれば、トークナイゼーションは価値そのものにフォーカスします。例えば通貨ならステーブルコイン、不動産ならセキュリティトークンといったように、元になるものの“価値”をトークン化するところにポイントがあります。
なぜトークン化する必要があるのかといえば、今まで非対称性が大きく、独占または隠されてきた“価値”をトークン化によって解放・民主化・再定義することが可能になったからです。
例えば、IPや「匠の技」のような資産は、これまで価値が過小評価され、市場も局所的に限定されていました。ですがトークン化を通じて価値移転が容易になり、グローバル規模で市場を形成可能になります。
また、あるコミュニティが成果創出の過程において重要な役割を果たしていても、そのコミュニティ自体の“価値”は算定が困難でした。これもトークン化によってアクティビティやプロセスの真正性が証明されると、その過程や貢献にも価値が認められるようになります。
そして近年問題視されるビッグテックによるデータ独占についても、国家や企業の壁を超えて相互運用性が担保されるようになれば、個人が自分のデータに対して自己主権を保持して価値を享受できるようになります。
これを企業活用に落とし込んだのが以下の図です。
カスタマーフロントの領域では、先述のようにブランドやIPがグローバルの顧客にダイレクトに届き、価値が再評価されます。また、顧客をプロセスに巻き込むことも可能になり、エンゲージメントも向上します。
マルチステークホルダーの領域では、結果に関する貢献度が透明化されることで貢献度に応じた分配が可能になり、社内外のコラボレーションのコストが著しく下がります。また、環境や社会への貢献といった定量化しにくかった部分もプロセスバリューとして切り出し、価値として取引が可能になるでしょう。
そしてデータ&アセットについては、企業が持つ既存のデータを真に価値として評価可能になります。
これらの各領域の具体的な事例についてはウェビナー本編で紹介していますので、より詳しくご覧になりたい方は、オンデマンドの動画版(無料)をご視聴ください。
金融機関におけるWeb3の可能性
ここからは金融機関におけるWeb3の可能性を見ていきます。
改めてWeb3を“金融的”に定義すると「デジタル上でのトークンワールドの中でさまざまな取引がなされること」となります。
また、Web3は金融市場を脅かす存在のように語られることもありますが、Web3の発展において金融は不可欠であり、むしろWeb3市場は金融機関を求めています。金融こそWeb3が生きる分野とも言えるでしょう。
より具体的には、Web3によって金融はどのように変わると考えられるのでしょうか。以下のようにトークン化によって価値の再定義が行われると、金融においてはふたつの軸の広がりが考えられます。
まずひとつは「機能が増える」という方向です。先述のグローバルでの公平な価値評価や、過程や貢献の価値評価、個人によるデータの自己主権の保持などにおいて求められる機能は、実は普段から金融機関が取り組んでいるものが多く、Web3を取り入れることで金融機能自体が大幅に進化する可能性もあります。
ここでの象徴的なWeb3の機能としては、ある成果ができるまでに誰が・どのように貢献したのかを連続的に捉えて適切な利益分配を行える「ヒストリカルプライシング」や、誰が・どのくらいの利益を得る権利があるのかを自動的に評価し、自分以外の人にも利益をシェアできる「バリューベースシェアリング」などがあります。
また、もうひとつの「アセットが拡がる」という方向については、Web3の機能拡張によって、従来の金融サービスの中でのさまざまなビジネスやサービスの拡張が考えられます。
上記の図は金融事業を大きくふたつに二分したもので、「トランザクション型」と「リスクテイク型」のそれぞれでWeb3を組み込んだ動きが生まれてきています。一見すると新しい事業のように見えるかもしれませんが、実は既存の金融機能にWeb3を組み込んだものも多く、意外とチャレンジのハードルは低いと言えるでしょう。
「Web3で何ができるのか?」を、より平易な言葉で整理したものが以下のスライドです。このうち「流通していたなかったものを流通させる」や「隠れていた投資余力・人材を開放する」について、ウェビナー本編ではNFTを活用したホテルサービスの事例を紹介しています。さらに、その事例から考えられる新たな市場の可能性と金融機関の関わり方についても併せて取り上げています。
従来は担保価値の算定が難しかった案件にも分散投資が可能になるという点で、金融機関にとって示唆の得られる事例ですので、ぜひウェビナーの動画版も併せてご覧ください。
国内外でWeb3のシフトは進行しつつある
日本は遅れているものの、グローバルではクリプト(暗号)シフトのトレンドは既に起こっています。下の図の左側にある既存の資本経済における資本から、右側のトークンによる新たな資本経済における資産へのシフトはスピーディに進んでいます。
また、日本国内においてもWeb3市場でチャレンジを始めている企業は増えています。特に2020年5月の改正金商法施行を皮切りにしてセキュリティトークンビジネスは急拡大中です。業種横断でWeb3の取り組みが活性化していますが、金融機関が活躍する余地はまだまだ大いにあります。
さて、今回のウェビナーでは新しい概念や言葉が数多く登場しましたが、Web3の要点を端的に説明すれば、従来の“物質”ではなく、“価値”そのものに着目するということです。そして、Web3市場は金融機関の積極的な関与を求めており、かつ金融機関からすれば既存の競争源泉を変えずに戦うことができるというメリットもあります。
ですが一方でWeb3関連の技術者は不足しており、自社のリソースのみで実装することは困難です。Web3の実装においては、適材適所のパートナーシップが重要になるでしょう。
ウェビナー本編については無料のオンデマンド版ご覧いただけますので、Web3について具体的な事例を交えて理解したいという方はぜひご視聴ください。
今回のウェビナーでは、金融業界の外部へと目を向け、最新の顧客体験の創造に取り組んでいる事例を紹介しました。本記事の内容は、オンデマンド視聴可能なウェビナーでより詳しく紹介しております。ハンズオン資料のご提供ほか、豊富な図版を交えた説明、視聴者からのQ&Aを含む約60分の映像コンテンツとなっておりますので、ぜひご視聴ください。
アクセンチュア金融サービス本部ウェビナー第61回のご視聴はこちら。