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COVID19(新型コロナウイルス)の感染拡大が始まったのは2020年初頭。それから2年以上が経った今でも、感染拡大と抑制の波を繰り返しながら、いまだ見通しが不透明な状況が続いています。
この間、社会のデジタル化は急速に進み、リモートワークに代表されるように企業は働き方を変え、価値提供の方法さえも変わってきました。まだCOVID19が収束していないとはいえ、変革や飛躍的な成長を実現した企業と、そうでない企業に分かれつつあるのも今の状況です。
今回のウェビナーでは、COVID19によって社会はどう変わったかをまとめ、その社会変化の先にある世界を議論し、さらには日本の金融機関に対する示唆を考察します。
成長を続けた企業は何が違ったのか?
アクセンチュアでは、2020年の緊急事態宣言以前から、COVID19によってどのような環境変化が予測されるか、さまざまな金融機関と過去の歴史を踏まえながら議論を行いました。当時の予測は、どの程度現実のものになったのでしょうか。
上記の図は、過去のリーマン危機(リーマンショック)になぞらえ、三つのフェーズを予測したものです。まずフェーズ1「危機の対処と収束・回復」については、アクセンチュアが立てたシナリオ仮説はほぼ予想通りとなりました。フェーズ2「原因究明と規制の変化(強化・緩和)」については、まだ進んでいないものがあるものの、リモート環境の規制緩和や環境整備は大きく前進しました。
上記は、市場全体の株価が大きく下がる中で株価が上昇している企業に注目し、今後のトレンドについて予測していたフェーズ3「産業構造の変化」を詳しく説明した図です。「リモートX」や「非接触型ビジネス」はおおむね予想通りでしたが、医療・ヘルスケア分野に関しては予測よりも進捗が遅い結果となりました。
COVID19の中においても成長した企業とそうでない企業に分かれます。特に注目したいのは、COVID19以前、上記のフォロワー企業群の中にありながら、それ以降に大きな成長を続けた「飛躍的企業」です。
COVID19期間中の飛躍的企業とフォロワー企業では何が違ったのでしょうか。主なポイントとしては、「ビジネス優先順位再考による競争力の強化」、「テクノロジープラットフォームの再構築」、「投資ポートフォリオ転換」が挙げられます。
飛躍的企業とそうでない企業の違いとしては、ビジネス、テクノロジー、投資の各領域において大胆な変革に取り組んだかどうかが差を生んだと言えるでしょう。
既出トレンドはWeb3や自律的エコノミーへと進化
COVID19によってもたらされた新しいライフスタイルやワークスタイルは、今後も「揺り戻し」とさらなる「進化」の間でせめぎあいを続けていくと考えられます。今回は、さらなる「進化」の方面にスポットを当てていきたいと思います。
先述の「リモートX」や「非接触型ビジネス」などのトレンドの“その先”にあるものを記載したのが上記の図です。例えば、リモートを突き詰めれば、見知らぬ人との共同作業を前提としたライフスタイルやワークスタイルが普及する可能性があります。さらにメタバースやWeb3が本格普及していく中で、メタバースやWeb3を前提とした、世界中の見知らぬ人との共同作業を中心とする新しい経済「Web3型エコノミー」が誕生するのではないかと考えられます。
また、非接触型ビジネスを突き詰めた先にありえるのが、無人での自律的エコノミーです。あらゆるものがトークン化され、デジタル世界でも、物理世界でも、スマートコントラクトやロボットによってトランザクションが自律的に行われる「自律的エコノミー」が誕生する可能性があります。
その一例が三井住友信託銀行様のトークンエコノミーの取り組みです。同行は、あらゆるもののトークン化を目指し、デジタルアセットの効率的かつ良質な発行〜受託・管理サービスの展開を企図しています。この取り組みにおいて、アクセンチュアは権利移転の第三者対抗要件を満たしたブロックチェーン プラットフォーム「axia(accenture token exchange infrastructure)」を準備しています。
その他、グリーン×スマートシティやヘルスケア変革についてはウェビナー本編で紹介しておりますので、ご興味のある方は無料のオンデマンド版にてご視聴ください。
海外との違いと、日本の金融機関への示唆
COVID19は日本の金融機関にも変革を迫りました。発生直後は、まずは事業継続すべく「耐える」ことが求められました。次に、ウィズコロナに対応すべく「変わる」体制が重要となりました。具体的には、ディストリビューションの高度化やオペレーションの高度化、システム・人材・働き方のDXといった事業インフラの高度化が挙げられます。
そして、「耐える」「変わる」の次のフェーズが「成長する」です。今後は、金融をコアとしながら新しい事業へピボットする事業モデルの高度化が必要になります。既に次の成長への「種まき」を初めている企業も多くいらっしゃることでしょう。
ここで、先述の「飛躍的企業」がどのようなレベルで変革に取り組んだのかを見てみます。下図にある飛躍的企業以外でよく見られた特徴として、パーパスは再設定したものの、事業戦略までは反映されなかったという例がありました。一方、飛躍的企業は、パーパスの再設定にとどまることなく、事業ポートフォリオやビジネスモデルをパーパスと連動して変革しています。
その他の項目についても、成長領域への大胆な投資、業務プロセスの変革、組織全体のデジタル人材化、コアまで含めたデジタル化とクラウド化など、変革に向けて舵を振り切っていることが見て取れます。
日本の金融機関も外的な力によって変革を迫られましたが、海外ではそれ以上の圧力によって大胆な変革が進みました。結果として、日本は海外と比べて、あまり変革が進まなかったという構図になっています。
海外との明確な違いとしては、ロックダウンの有無があげられます。諸外国ではロックダウンという強制的な措置が取られたことで、いわばタイムマシン的に抜本的DXが進み、自らをテクノロジー企業と標榜する金融機関も出てきました。
このように背景の違いはありますが、日本の金融機関も競争力を強化すべく、飛躍的企業の例のような変革を推進していくべきであることは間違いありません。
今回のウェビナーでは、金融業界の外部へと目を向け、最新の顧客体験の創造に取り組んでいる事例を紹介しました。