金融サービスブログ    

このシリーズの記事一覧:

  1. 真の「生産性向上」と業務プロセス再構築、そして人の重要性海外先進事例に学ぶデジタル変革実現の鍵とは? ~ウェビナー
  2. RPAの要諦と次なるデジタル変革への挑戦 ~ウェビナー
  3. 「アンバンドル」から「社会構造変革」へ:日本におけるフィンテックの将来的可能性 ~ウェビナー
  4. 来たる“創造的破壊”の波に向けた、保険ビジネスのあり方とは ~ウェビナー
  5. デジタルウェルスマネジメントがもたらすアドバイスモデルの転換 _真の顧客本位の実現に向けて ~ウェビナー
  6. コーポレート領域でのデジタル技術導入による変革効果の限界と打開策–RegTechを中心とした効果創出の仕組みづくり  ~ウェビナー
  7. HUMAN + MACHINE:ビジネス変革における第3の波に日本企業はどう立ち向かうべきか ~ウェビナー
  8. ブロックチェーンは金融ビジネスをどう変えるか、何が可能になるのか~ウェビナー
  9. デジタル変革のあるべき姿 – 伊予銀行様DHDバンクを例に ~ウェビナー
  10. デジタル変革の鍵を握るCloud活用をどう進めるべきか – 金融業界における成功の要因 ~ウェビナー
  11. 真の顧客起点型ビジネスモデルの追求 –2つの主導権争いと鍵となるテクノロジーの展望~ウェビナー
  12. デジタルトランスフォーメーション(DX)における人材活用・リスキルの進め方とは~ウェビナー
  13. 顧客を知り、顧客に応え、顧客と共に育てるビジネス ー 2019年消費者動向調査を踏まえて ~ウェビナー

近年グローバル規模で創造的破壊をけん引し、様々な分野で既存ビジネスの常識を根底から覆しつつあるデジタルイノベーション企業GAFA(Google・Amazon・Facebook・Apple)。米国の経済誌フォーチュンによる企業番付Fortune500の2017年版時価総額ランキングでトップ5のうち3位以外を独占するなど、世界の市場ひいては経済・社会全体に大きな影響を及ぼしています[1]。実はGAFAと国内金融機関の業績が、一定の基準で見た場合にそれほど大きく変わらないのをご存知でしょうか?

下のグラフの純利益(横軸)を基準として比較した場合(Appleを除く)、両者はいずれも最大2兆円程度の範囲に収まっており、Amazonよりも高い利益を実現する国内金融機関も見られます。しかし、時価総額(縦軸)を基準に見ると様相は劇的に変わります。最大10兆円程度である国内大手金融機関と、約60〜90兆円というGAFAの莫大な時価総額の間には、場合によっては10倍以上という大きな差が生じています。つまり、日本の金融機関が財務価値に応じた時価総額にとどまっているのに対し、GAFAはそれをはるかに上回る時価総額を実現しているのです。

両者を大きく分ける要因の1つとなっているのは、企業としての経営ビジョンとビジネスへのアプローチ、そしてその結果生じる“期待価値”の存在です。例えば“地球上で最も豊富な品揃え、地球上で最もお客様を大切にできる企業”というビジョンを掲げるAmazonは、元々書籍の販売プラットフォームとして創業しながらも、既存市場でのシェア獲得を最終目標にせず、顧客が求めていることを探索し、顧客の声に応え続けることを企業の最優先事項として推し進めてきました。自社の業績拡大よりも顧客や社会が抱える課題の解決を優先する、こうしたアプローチが財務価値を大きく上回る期待価値を生み、企業価値を高めているのです。

これからの企業経営は、従来の収益拡大・コスト削減・リスク対応といった自社目線の価値観だけでは、既存市場を破壊し、新たな市場を創造するようなイノベーションは起こすことができません。GAFAの例が象徴するように、顧客を知る、顧客に応える、顧客とともにビジネスを育てるという顧客本位の考え方は、新たな時代の経営・ビジネスに不可欠となりつつあるのです。

顧客を知る ー 金融サービスと消費者の最新トレンド

では金融機関を考えた場合、顧客本位のアプローチとは具体的に何を意味するのでしょうか、そして金融サービスに対する消費者の意識はどのような変化しているのでしょうか?その重要なヒントとなるのが、今年アクセンチュアが実施した金融サービスに対する消費者意識に焦点を当てたグローバル調査の結果です。世界28カ国の約47,000名(うち、日本の消費者約2,000名)に対して行われた同調査では、重要な鍵となる5つのトレンドが浮き彫りになっています。

1.顧客は、コアニーズに応えてくれる、パッケージ化された価値提供を求めている

2. 顧客は、金融機関からのパーソナライズされた提案を望むようになっている

3.顧客は、より良いアドバイスや魅力的サービスを受けられるなら、積極的に金融機関とデータ共有を行う

4. 顧客は、物理的チャネルとデジタルチャネルが融合されることを望んでいる

5. 金融機関に対する顧客の信頼は高く、ますます強まっている

ここで興味深いのは、グローバルと日本の調査対象者に異なった傾向が見られる点です。例えば日本の消費者は、グローバルと比較して、金融機関が提供するパッケージされた商品・サービスや、パーソナライズされた提案への関心が比較的低く、金融機関へのデータ共有にもやや消極的です。一方、もし自身のデータを預けるとした場合、その提供先はグローバルが金融機関と同レベルでオンライン決済事業者(Paypalなど)を信頼しているのに対し、日本は金融機関のみ信頼が高く、金融機機関以外の事業者に対する信頼度は非常に低いスコアになっています。

消費者にとって、金融は生活・人生に欠かせない要素である一方、現在の金融機関に対しては、「より迅速に」「より簡単に」「より低価格で」というオペレーショナルエクセレンスの実現という期待値にとどまっています。金融機関が、消費者の人生全体の課題・ニーズに寄り添うパートナーとなるためには、これまで金融機関が築き上げてきた信頼は守りつつも、金融サービスの枠にとどまらず、顧客が本質的に解決してほしいと思う“単位”でサービス・成果を届けられる存在になることが、今後ますます求められることになるでしょう。

動画:アクセンチュア2019年消費者動向調査 Accenture 2019 Global Financial Services Consumer Study (日本語字幕)

顧客に応える ― ターゲットと接点の拡大

顧客を理解し、そのニーズに応える段階で考えるべきポイントの1つは、顧客という言葉の意味合いです。ここで言う顧客には、自社と既に取引がある顧客のことだけでなく、今後取引をするかもしれない潜在顧客、場合によっては消費者・社会全体も含まれます。新たな時代の企業経営・ビジネスでは、広義の顧客を見据えて全体像を捉えた上で、そのニーズを理解して応えるというアプローチが不可欠となっていくでしょう。

これまで多くの金融機関は、便利で豊かな暮らしといった本質的ニーズが“モノ・コト”という形をとり、金融商品・サービスへのニーズとして表面化した時に初めて顧客と接点を持つという考え方が主流でした。しかし、近年金融サービスに参入した非金融企業では、本質的ニーズが“モノ・コト”という形をとった段階で顧客との接点を持ち、シームレスに金融商品・サービスへつなげていくという手法が見られるようになっています。今後は、顧客のより深い本質的ニーズにアプローチをしつつ、日常だけではなく非日常、あるいは様々なライフステージに渡って幅広く接点を持ちながら、顧客にとっての喜び・満足につなげていくことが重要となるのです。

スペインの大手銀行BBVAが提供するValoraというサービスは、こうした取り組みを実践する金融機関の一例です。同社は不動産会社のデータ活用やサービス統合を通じて「銀行で家を借りる・銀行で家を買う」というコンセプトのサービスを展開。同サービスではGPS位置情報と物件情報がリンクされ、街を歩きながらスマホをかざすと借物件・売物件の情報をアプリ上で表示します。アプリを使って興味を持った物件の部屋の中を閲覧し、お気に入り登録をする、あるいは詳細な情報を確認することも可能です。また物件価格の推移や、周辺地域の治安、近隣サービス(例:病院)などの情報も合わせて提供するなど、契約前に可能な限り多くの判断材料を提供して、「良い家・良い環境に住みたい」という顧客の本質的なニーズへ応えています。同サービスは、開始1年で170万人が利用し、そのうち約12万人がローンの申し込みを行っています[2]。(こちらのリンク[YouTube]から、アプリの具体的な利用イメージをご覧いただけます。)

顧客とともに育てる ― 顧客本位の企業活動に向けて

顧客は、機能ではなく、より感情で「成果」を求めるようになってきています。そのため、一度顧客に満足度の高い体験を提供できたとしても、それが継続されない限り、顧客は抵抗感なく他企業へ乗り換えてしまいます。企業として達成したい成果を実現するためには、顧客の声を反映しながら一緒にサービスを育てるという考え方が必要となるのはそのためです。そしてこうしたアプローチを実践するためには、企業活動全体の変革が求められます。

例えばこれまで多くの金融機関は、企業課題を起点に、成長や短期的利益、組織内の役割分担といった論理を構築し、年単位の時間をかけた大きな取組みをするのが常でした。しかし今後は顧客課題を軸に、様々な能力・スキルを持った人材のアイディアを融合しながら、自社の存在意義・ビジョンを体現する商品・サービスを世に出すという姿勢が不可欠です。

またプロトタイプ・試行を繰り返すアジャイルのアプローチを積極的に取り入れることも重要となります。顧客が「価値」と感じるサービスの単位で、ビジネス・テクノロジー・デザインといった様々な人材が協働して、スピード感を持って商品・サービスを開発・リリースする。そして顧客からのフィードバックを取り入れながら継続的に改善・高度化を繰り返し、顧客体験をさらに良いものに変え続ける。こうした考え方をベースにあらゆる変化に対応し、顧客と一緒に商品・サービスを育てていくことが求められているのです。

金融機関が確認すべき10のチェックリスト

ここまで顧客を知る、顧客に応える、顧客とともに育てるという観点から顧客本位のビジネスについて解説してきましたが、取組みの必要性を感じながらも、改革をどこから始めるべきか、組織をどのように変えていくべきか、データをいかに活用すべきか今一つ分からないという方もいらっしゃるかもしれません。まずは、下記のチェックリストを使い、自社の取組みの現状を確認してみてください。「顧客視点」を謳って推進してきた取組みが、本当に顧客課題に応えるものになっているか、それを支える仕組み・基盤を整備できているか、まず何からアクションを取るべきかが明らかになると思います。

私たちが講演した今回のウェビナーでは、国内外の興味深い事例といった様々な情報を交えながら、顧客本位のビジネスが今求められる理由、そして実現に向けて重要となるポイントなどについてさらに詳しく解説しています。オンディマンドで視聴することが可能ですので、宜しければご覧ください*。

*同業他社、個人の方などのお申し込みはお断りさせていただく場合がございます。予めご了承ください。

[1] Fortune 500
[2] 出所:https://www.bbva.es/eng/particulares/hipotecas-prestamos/bbva-valora/index.jsp