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第53回の金融ウェビナー(2023年2月27日開催)では金融業界におけるデータ・AIの活用について紹介しましたが、ChatGPTの爆発的な普及により、ジェネレーティブAI(生成AI)の注目度はさらに高まっています。

ジェネレーティブAIの活用は様々な業界で急速に進みつつありますが、金融ビジネスにどのようなインパクトを与えるのか、そして人間の能力をどのように拡張しうるのか、今回の金融ウェビナーでは、アクセンチュアでの実際の活用事例も交えながらジェネレーティブAIの潜在能力を見ていきます。

特にウェビナー本編で投影した、アクセンチュア社員が「AI社員」と一緒に会議を行う様子を収めた動画は、参加者の方から多くの反応をいただきました。本レポートと併せてオンデマンドの動画版もぜひご覧ください。

ジェネレーティブAIの整理と金融業界へのインパクト

既に多くの方がご存知のように、大規模言語モデルのChatGPTは類を見ないスピードで急速に普及し、わずか2ヶ月でユーザー数1億人を突破しました。また、MBA最終試験や米医師資格試験に対してChatGPTが生成した回答が合格レベルに達するなど、その能力の高さも世間を騒がせています。

大規模言語モデルはMBAや医師、弁護士など、専門性が高い職業への影響が取り沙汰されることが多いものの、実際にはあらゆる場面での活用が可能であり、インターネットと同等か、それ以上のインパクトを社会にもたらす可能性も秘めた技術であると言えます。

以下はビジネスへの影響度を業界別に見たグラフです。「大規模言語モデルによるビジネスへの影響が大きい」とされる業界の上位を見ると、1位は金融業、2位は保険業、4位に証券と、特に金融業界へのインパクトが大きいことが分かります。

ビジネスでのユースケース例を以下にまとめていますが、あらゆる部門、あらゆる業務においてジェネレーティブAIは活用可能です。今後、様々な業務のあり方が大きく変わっていくことは確実だと言えます

一方、ビジネスでAIを活用するには、そのリスクも認識しておくことが欠かせません。まずひとつめのリスクは、ウェブブラウザなどでデフォルトの設定のままジェネレーティブAIを利用すると、インプットした情報がAIの学習に使用されてしまうという情報漏洩のリスク。もうひとつは、ジェネレーティブAIは「もっともらしい」アウトプットを出すことに特化した技術であるということ。その真偽や倫理性は人間が判断する必要があります。

アクセンチュアでの「AI社員」の活用事例

ここからはアクセンチュアでの活用事例を紹介します。先述のリスクを踏まえ、アクセンチュアでは自社内に「アクセンチュア版ChatGPT」とでも呼ぶべきGPTを構築し、セキュリティのリスクを低減しながらジェネレーティブAIを活用しています。インターネット上の情報から学習したGPTではなく、社内のナレッジをベースに回答するGPTを構築することで、アウトプットの精度は調整が可能になります。

現在、アクセンチュアでは「AI社員」のパイロット導入を進めています。これは社内で「ピアワーカープラットフォーム」と呼んでいるものであり、イメージとしては、上司や先輩からの指示でリサーチをしたり、報告をレポートにまとめたりといった新入社員が担当していた業務をAI社員に任せるものです。いわば若手社員にもアシスタントがつくような形となり、すべての従業員をエンパワーメントできる取り組みになります。

ピアワーカープラットフォーム=AI社員を実現する基盤としてアクセンチュアが活用しているのが「AI Hubプラットフォーム」です。これはアクセンチュアが2018年からサービスを開始しているAIプラットフォームで、ジェネレーティブAIを含めた様々なエンジンから最適なものを適材適所で組み合わせ、社内外のデータやソフトと連携し、セキュリティも担保することが可能です。

万能のAIというものは存在せず、文章や画像の生成が得意なAI、数字の予測が得意なAI、最適化が得意なAIなど、様々なAIがあります。また、直近ではChatGPTがもっとも高い注目を浴びていますが、その時のベストなAIは変わっていく可能性もあります。AIを最適な形で活用するためには、AI×AIの組み合わせで大きな効果を生むことや、必要に応じてAIを自由に「脱着」することは重要なポイントになります。

なお、この章ではアクセンチュア社内で「AI社員」を利用している実際の会議風景の動画も投影し、大きな反響をいただきました。ぜひウェビナーのオンデマンド版もご覧いただくことをおすすめします。

金融業界でのジェネレーティブAI活用領域

次に、金融業界でジェネレーティブAIをどのように活用できるのかを見ていきます。

まず銀行については、店舗やアプリなどの対顧客サービスにおいてGPTを搭載したエージェントが出てくると考えられます。ウェルスマネジメントでも、AIによって最適な商品や運用手法の提案が行えるようになります。また、営業・マーケティング、企画の領域でもGPTを活用した高度化・効率化が進むでしょう。その他、バンキングアプリ開発でもジェネレーティブAIを使った高度化・効率化が可能です。このように、銀行の非常に広範な業務でAIの活用が考えられます。

証券業界においても銀行と同様、フロントからミドル・バックまで、幅広い分野でAIの適用が可能です。トレーダーの意思決定支援やリスク管理などの領域もAIが得意とするところです。

保険業界も同じく、きわめて広い範囲でAIを活用することができるでしょう。

このように銀行、証券、保険のすべての業界において、そして幅広い分野においてAIの適用が可能になっています。ジェネレーティブAIは、今まで人間にしかできないと思われていた分野でも能力を発揮しつつありますが、人間とAIで出せる選択肢の幅は違います。どこで/どのようにAIを適用するか、しっかりと定義することが大切です。

AIで全社改革を実現するには、多様な能力・知見が必要

ジェネレーティブAIの導入と適用においては、まず「あるべき姿」を描くことが何よりも重要です。そして以下のステップのように、社員への啓蒙、AIの適用可能領域を特定するアセスメントを行い、実証実験(PoC)だけで終わらせることなく、全社改革につなげていきます。

以下はジェネレーティブAI導入のプロジェクトで多い進め方の例です。特徴は、ひとつずつステップを踏んでいくというよりは、方針の討議、社員啓蒙、情報漏洩を防ぐガイドラインの策定、社員が利用できる環境の提供などを並行して一気に進めていく点です。ジェネレーティブAIの普及速度がきわめて早く、自発的に利用する社員も出てくる中では、一気呵成に全社展開まで進めていくスピード感が求められます。

今回のウェビナーはジェネレーティブAIの世界のほんの一部を紹介しただけですが、導入には多岐にわたる要素が必要になります。技術力に加え、業務を変革する経験値。どのような顧客体験が求められており、業務がどうあるべきかを描ける知見。様々な領域における豊富なナレッジは、ジェネレーティブAIの導入や活用においてアクセンチュアが持つ大きな強みです。

私たちアクセンチュアがクライアントと一緒に実現したいのは、ジェネレーティブAI時代の新しい金融業界の姿です。ジェネレーティブAIのインパクトや可能性にご興味のある方は、アクセンチュアでの実際の活用動画も収められたウェビナー動画をぜひご覧ください。ジェネレーティブAIのインパクトを体感していただけるかと思います。

今回のウェビナーでは、金融業界の外部へと目を向け、最新の顧客体験の創造に取り組んでいる事例を紹介しました。本記事の内容は、オンデマンド視聴可能なウェビナーでより詳しく紹介しております。ハンズオン資料のご提供ほか、豊富な図版を交えた説明、視聴者からのQ&Aを含む約60分の映像コンテンツとなっておりますので、ぜひご視聴ください。

アクセンチュア金融サービス本部ウェビナー第57回のご視聴はこちら

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