このシリーズの記事一覧:
人手不足、働き方改革、デジタルトランスフォーメーションなどにより、アウトソーシングの市場は年々拡大しています。また、新型コロナウイルスの感染拡大によるリモートワーク拡大と業務最適化の流れもアウトソーシング市場の拡大を後押ししています。
その中で、従来のアウトソーシングと異なるトレンドが誕生し、拡大しています。今回の金融ウェビナーでは、アウトソーシングの新たな潮流と人材戦略について語りました。
バックオフィスのみならず、フロント業務やコア業務が急拡大
国内におけるアウトソーシング市場は年々成長しており、従来のバックオフィス業務の受託だけでなく、マーケティングや営業などのフロント部門、銀行業務や保険事務業務など業界特有のコア部門の業務などが伸びています。これらは特に2021年度から急速に伸びており、今後も高い成長が見込まれています。
今回アウトソーシングのパターンを7つに分け、各パターンを事例とともに紹介しました。表の縦軸は委託の範囲、横軸は目的を示しています。「RUN」は既存業務の効率化、「Change/Transformation」は既存業務の変革、「NEW」は新規業務・サービスの創出という分類です。
注目すべきアウトソーシングの活用事例
ここからアウトソーシングの活用事例を具体的に紹介します。
・ 成長に伴う要員不足にデジタル+BPOで価値創出
国内の金融機関における事例です。ビジネスが急成長しているクライアントでしたが、業務量の増加に対して内部のリソースが逼迫しており、一方で人員を増やすにも限界があり、オペレーティングモデルを転換する必要がありました。
本事例のポイントは、純粋に工数をアウトソースするのではなく、デジタルを取り入れて人員の追加を必要としないモデルを構築した点です。デジタルトランスフォーメーションにより業務の効率化・自動化を実現し、従来の人員は企画などのより重要な業務に注力できるようになりました。
顧客接点をデジタルプラットフォームの上で管理することで、アウトソーシングの範囲だけでなく、他部門も巻き込みながら継続的な業務改善にも貢献できた事例です。
・ BPOを活用し営業改革・高度化を実現
新型コロナウイルスの拡大により対面型の営業が困難になり、非対面のセールス機能の強化が求められるようになりました。本事例のクライアントは短期間のうちに競争力のあるインサイドセールスを立ち上げる必要性があり、アクセンチュアに相談が寄せられました。
この事例においては、アクセンチュアはインサイドセールスの機能そのものを引き受け、テクノロジープラットフォームや人材採用・育成アセットをワンパッケージで提供しました。また、初期コストを抑える成果報酬型のモデルとすることで、ビジネスのトップラインを伸ばす貢献をしています。
注目すべき点は、クライアントのインサイドセールスの高度化・育成に伴走するモデルを提供している点です。またグローバルの知見により最適化されたパッケージを短期導入できたのも、アクセンチュアの強みのひとつです。これは非金融会社の事例でしたが、グローバルでは保険会社の事例もあり、国内金融会社にも活用いただけるソリューションです。
・ BPOを活用しマーケティング改革を実現
マーケティング子会社の事例を紹介します。デジタルチャネルへの転換が課題となっているクライアントであり、アクセンチュアは局所的なBPO提供に留まらず、マーケティングトランスフォーメーションの支援を行いました。
アクセンチュアはプラットフォームからコンサルティング、クリエイティブまで包括的に提供するジョイントベンチャーを立ち上げて一括で業務を請け負い、クライアントの社員は事業戦略や企画・分析に集中できるようになりました。一方で、ジョイントベンチャー内の協業によって、クライアント社員のスキル育成にも貢献できました。
・ 新サービス立ち上げをBPO活用で迅速に実現
海外銀行のデジタル化を紹介します。個人ローン市場が成長する中、クライアントは既存の商品が思うように売れていない状況から、早急に新しいサービスを開発し、市場の伸びに追いつく必要がありました。
従来はコンサルティングによって、デジタルトランスフォーメーションを支援するケースが多いですが、今回はBPOとして顧客体験からアプリケーションの構築までを一貫して受託。さらに管理のプラットフォーム、オペレーションまでをセットで提供しました。
本事例のポイントは、自社のケイパビリティが不足している中で外部のリソースを上手く活用し、短期間でサービスを実現できた点です。なおかつ、アクセンチュアのデジタルチームがクライアントの社員と一体になって推進することで、人材育成も仕掛けとして織り込んだ点です。新サービスは先読みが難しいことから、コストは初期費用+取引件数による従量課金のモデルとすることで、リスクを上手くシェアできた点にも注目したいところです。
・ バックオフィスのDX推進とリスキル
デジタルトランスフォーメーションと併せて人材のリスキルも行った事例です。このクライアントはオペレーション改善は継続的に取り組んできましたが、先端技術を活用した自前でのデジタルトランスフォーメーション推進には苦戦しており、アクセンチュアに相談をいただきました。
アクセンチュアはクライアントとジョイントベンチャーを立ち上げ、自前のBPO運営スキームを移植。クライアント社員の転籍により自社人材を活用しながらも、アクセンチュアのメンバーとともに伴走型でDX人材の育成を行いました。
その後、経験を積んだ社員の方々はオフショアへの業務移管で経験を生かすなど、新たな価値も創出されています。「攻めのDX」に価値が展開された好事例と言えます。
アウトソーシングはトランスフォーメーションそのもの
これらの事例からわかるように、アウトソーシングは委託して終わりではなく、トランスフォーメーションそのものと言えます。
競争領域では短期間で成果を出すためにアウトソーシングを活用されているものの、継続的に業務を行うための自社の人材育成も意識されています。
アウトソーシングは社内人材のスキルの空洞化が懸念されることもありますが、人材育成や転籍といったキャリアもあり、社員にとっても成長機会となりえます。