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近年、自社の事業や自社が提供できるコト・モノをベースとした事業展開から、顧客のニーズをベースと捉えたときにどんな事業が必要になるのか?という観点からの事業改善・拡大も多くなり、Forbsの調べでは、“顧客起点を重視している企業は、そうでない企業に比べて収益性が60%高い”などの結果も出ている状況である。

今後もこの兆しは強くなる傾向にあると考えられ“顧客起点でのConvergence Agenda(業界横断でのサービス検討・事業検討)”は重要視されていくと感じている。

本稿では、近年特に顕著に表れている“業界の垣根の消失”とそこから生まれてくる”機会“とその”機会の活かし方“について、Paymentマーケットの実例をベースとしながら考察させて頂きたい。

変わるPaymentマーケット

私は、金融業界、その中でも主にPayment、異業種金融参入事業者様へのコンサルティングを中心に活動をしてきたが、このPayment業界においては、私が従事した15年で、大きく変化したポイントがあると感じている。

具体的には、以下のような点だ。

キャッシュレス比率は、約10%から30%へ拡大(出典:キャッシュレス・ロードマップ 2019より引用)

消費者の買い物の10%がECへとシフト。かつ年率8%で拡大継続中(出典:平成30年 度電子商取引に関する市場調査」(経済産業省))

わずか15年で楽天カードが国内最大手のカード会社に成長

携帯キャリアはじめ、異業種企業による銀行・カード会社の成長著しい状況がここ数年継続

スマートフォン・非対面でほぼ全ての決済手続きが可能に

上記5つの変化の共通点は何か。この共通点ポイント全てが、「消費者の選択」により生まれている変化であり、従来よりも“より良いもの”が出てきた結果が、このようなトレンドを創り出していると考えられる(図1/2)。

Paymentマーケットにおいてエンドユーザーから選ばれている商品・サービスの特徴は、大きく分類すると3つ。

①     よりお得に
(楽天ポイント、dポイント等)、

②     より簡単(すぐ)に、

③     よりわかりやすく、

この①②③の特徴を複数保有、またはいずれかが他より大きく秀でているものが選ばれている傾向にある。

また近年では、企業に限らずエンドユーザー(特に若年層)のSDGsなど社会的課題に対する意識の高まりもあり、社会課題への取り組みをいち早く進める企業も増加している。凸版印刷では、環境配慮型非接触ICカード「TOPPANリサイクルPETカード」(出典:凸版印刷プレスリリースより)を発行、三井住友カードでは、国内初となるカードレスタイプのクレジットカード「三井住友カード(カードレス)」(出典:三井住友カードプレスリリースより)が発表された。(一例)

改革スピードの差はどこから

1つ、より加速的に成長しているプレイヤーとその他のプレイヤーを比較し、浮かび上がるのは、改革スピードの差であると考えられる。

例えば、異業種参入者のように当事業における“ベースが無い”状態であれば、前述の「エンドユーザーの求める①②③」を純粋に追求すればよい。そのため、追及のための投資量・投下工数・意思決定スピードに、改革スピードは依存する形となる。

一方で、既存事業を持つ“ベースが既にある”状態の場合、ベースをどのように活かすか、逆行する部分を如何に削ぐか、顧客影響をどう処理するか…、といった難題が散在する。まずそのお題への対処に目がいき、それらを解決してからの①②③…となることが多い。ここに、会社の差=改革スピードの差が出ていると考えられる。

当然のことながら、既存顧客へ与える影響を嫌い(※配慮を失うこととは異議)、結局のところ、既存プロダクト・サービスの変革を躊躇している会社は、後手を踏んでいる形となるため、エンドユーザーが認めるような新たな事業・商品を発することができていないという状況である。

サステナブルな成長のために

とはいえ、どの業界においても競争環境を生き抜いていかなければならない。そのためには、「市場の成長“以上”に自身が成長すること」。これがサステイナブルな企業成長の重要KPIであり、我々が日々の取組みの中で強く意識していることである。

仮に、このKPIを達成できない場合、どのような運命を辿ることになるか。
市場成長以上の成長が達成できなければ、

Lv1. ニッチ市場を抑える

Lv2. 市場の強者に選ばれる側となる(裏方として部分的に必要としてもらう)

Lv3. 別のマーケットに打って出る

Lv4. 縮小均衡を耐え抜く

Lv5. 淘汰される

このような運命を辿ることを踏まえると、まずLv.4に陥らないことが最低限重要であり、と同時に、今自身がどのポジションにいるのかを把握することがポイントになる。ただし、ここで、現在のPaymentマーケットにおける難しさが発動しているように見て取れる。

現在、国としての強化施策やコロナ禍によるキャッシュレス意識の高まりも相まって、本市場の取扱高は急速に伸びている。この市場成長が、自社の本来のポジションを判別し辛くさせ(≒市場全体の伸びを自社の成長と捉えてしまうと、良いポジションにいるように見えてしまう)、企業において適切な危機感・改革マインドを持つことの阻害要因になっていると考えられる。

弊社の試算では、キャッシュレス市場は2030年までは伸びると考えられるが、MDR(加盟店料率)が低下トレンドにあり低単価化が続いていること、更には、不正取引増加などにより業務コストが増加する要因を孕んでいる状態であることから、市場の伸びが鈍化したタイミングで、各社において急速にポジションの下落(前述のLv.1~5)が進行し、手を打つ前に(打つ手を考えている間に)“Lv5.淘汰される”という憂き目にあってしまう企業が出現することになるのではないかと考えている。

今、金融事業から垣根を越える

このような憂き状態に陥らないようにするためには、市場が成長している今このタイミング、投資余力のある今この時こそ、“エンドユーザーの求める①②③(前述)を含めた新しい価値”にチャレンジする必要があると考えている(図3/4)。

今のマーケットにおいて勢いのあるプレイヤーの特徴は、自社及びグループの強みを決済・金融領域にも活かしたうえで、顧客ニーズを充足している傾向にある。そのため、金融機関においては、自社から能動的に異業種プレイヤーとコラボしにいくことが重要ではないだろうか。

「みんなの銀行」のBaaSモデルの例をみても言えることだが、顧客のニーズと自社の企業価値を捉え直し、自ら異業種プレイヤーと様々な形でコラボレーションし、新たな価値創出へのチャレンジを続けることで、何が顧客に選ばれるのか/支持されるのかを見極めることが重要である。

その上で、今後キーになると考えられえる領域をいくつか紹介したい。

a.    EC(リアル店舗のEC活用、越境含む)

b.    SDGs/エシカル

c.    カラードコイン

d.    加盟店コラボ(B2Bビジネス強化)

e.    異業種コラボデータ活用(販売、カスタマーケアに活用)

f.    メタバース

g.    超低額処理インフラ(デジタル活用)

h.    高齢者向けサービス

i.     在日外国人向けサービス

当然のことながら、今日の競争・明日の競争に勝ち抜くことも重要だが、上記(a)~(i)は、今後5年以内に市場競争要因になり得ると考えられるキーワードである。もちろん、上記に限られることではないが、当領域においては新たな価値創出を実現できるよう、弊社としてもケイパビリティを強化・充足し、その中で、今後も更なる業界の発展に寄与できればと考えている。

弊社は、グローバルネットワークに加え、全産業の企業様をクライアントとさせて頂いている。今後は、従来のような対クライアント様への1対1のコンサルティングもさることながら、業界横断だからこそ生まれるコラボレーションの媒介者・仲介者として、n対1の新たな価値創出にも積極的に貢献していきたい。

※FSアーキテクトは、金融業界のトレンド、最新のIT情報、コンサルティングおよび貴重なユーザー事例を紹介するアクセンチュア日本発のビジネス季刊誌です。過去のFSアーキテクトはこちらをご覧ください。