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ChatGPTが登場して以降、Generative AIは世界的な注目を浴びており、銀行業界でもAI活用が重要な経営アジェンダとなりつつある。

AIは技術の進展が目覚ましく、今後ビジネスのあり方を一変してしまうポテンシャルを秘めているものの、AI単体での活用にとどまるとインパクトは限定的なものとなる可能性が高い。また、AI活用には一定リスクが伴うため、それらの対処も必要不可欠である。

本稿では、銀行業界におけるAI活用・進化の方向性を考察しつつ、AI活用の要諦を解説する。

概要及び背景

2022年度後半に登場した「ChatGPT」をはじめとするGenerative AIは、各産業に大きなインパクトを与えると予想されているが、銀行業界も例外ではない。足元では、書類作成、渉外履歴登録などの社内業務の効率化や、AIチャットによる問い合わせ対応などの議論が行われ、環境構築やPoCに着手する銀行も増加している。

それでは、今後Generative AIはどのようにビジネスに浸透し、インパクトを創出するのであろうか。弊社では、3段階からなるGenerative AIの活用ステップを定義している(図表1)。

Generative AI活用STEP

STEP1:環境構築

ビジネス活用に向けては適応余地を明らかにすると共に、リスク対応も不可欠である。Generative AIは革新的なテクノロジーである一方、情報漏洩、著作権侵害、非倫理的なコンテキスト発信などのリスクを抱えている。このようなリスクをマネージするためには、専用の社内環境を用意し、情報漏洩を防止することや、倫理面や著作権等の課題に対処すべく、責任あるAIの実現に向けたガバナンス規定や倫理規定、研修プログラム等を用意することが求められる。

STEP2:銀行固有業務への展開

預金や為替、融資など銀行固有業務にGenerative AIを適用するためには、オープンデータではなく、銀行の持つ独自データで学習させたAIが必要となる。まずは、照会業務などで活用されると想定されるが、いずれは業務アプリケーションにAIが完全に組み込まれ、チャネルはAIコンシェルジュを主体としたものへ、オペレーションもAI主体のものへと進化し、対顧サービス、社内業務いずれも大きな変革を遂げるであろう。

STEP3:新ビジネス創造

既存ビジネス変革の次は、GenerativeAIでしかできない新事業の創造が起きる。ここでは新ビジネスのアイディア例を2つご紹介したい。
➀ Peer2Peer プラットフォームこれまでのビジネスマッチングは銀行員や顧客がデータを参照し、人手でマッチングするという点がネックになり、活動に限界があった。一方、P2Pプラットフォームでは、Generative AIを活用することでマッチングを自動化し、顧客同士が直接つながる世界が実現する。これにより、商流ベースのマッチングのみならず、M&Aや人材採用、不動産売買など様々なニーズへ対応した新たなビジネスを作り出せるのではないかと考えている。

➁ バンカーAI近年銀行はコンサルティング型営業に力を入れているが、人によるアドバイスはリソースに制約があるため中小零細企業にまでは行き渡っていない。そこで、AIが中小零細企業の
経営者向けに、様々な経営アジェンダの相談相手となり、経営改善や資金繰りの安定化等に資するアドバイスを行うことが考えられる。経営者向けのみにとどまらず、資産家向け、個人事業主向けなど様々な属性・職種向けにも展開可能だ。多種多様なケースを学習したバンカーAIは、時間が経つにつれその重要性を増していくのではないだろうか。

AI進化を見据えた活用の要諦

AI活用による競争優位を築くためには、AIに閉じない発想と、AIを適切にコントロールすることが重要だ。

AIをつなぐ ~AI-Hub~

まず、AI活用にあたって重要な点は、「AIだけではインパクトのある取り組みにはつながらない」ということである。AIは他のシステムやツールと組み合わせ、End to Endの改革を行うことで初めてインパクトのある取り組みに昇華することができる。弊社ではAIHubというプラットフォームにて、様々なシステム・AIとのオーケストレーションを実現している。AI-Hubは三層で構成されており、Channel Pluginでフロントアプリと連携し、Coreでイベント制御を行い、Logic PluginでAIやバックエンドシステムに連携し実行処理を行う構造とすることで、業務やビジネスにAIを組込んだ一気通貫での変革が実現可能となっている。

またAIエンジン自体は栄枯盛衰の変化が激しく、得意領域の分化も進んでいる。よってAIエンジンを自由に着脱可能とし、データやプロンプトノウハウはAIエンジンが変わっても蓄積可能な構造とすることが重要である。データやノウハウこそが各銀行固有のものであり、AI活用における競争源泉に直結するからである。AI-Hubでは対話ログデータを社内に一元的に管理・蓄積する基盤を保有しており、これにより継続的にAIを賢くしていく構造を担保している。

進化するAI ~生成から実行へ~

昨年登場したChatGPTは「質問内容をインプットに回答文を生成する」というものであるが、現在は更に一歩進んで回答のみにとどまらず、自らタスクを設計し、実行までを行うAutoGPTと呼ばれるものが生まれつつある。

例えば為替取引においては、取引戦略の立案からバックテストの実施、トレード実行までをAIが自動で実行するプログラムなども既に開発されている。

AIによる完全自動化も視野に入る状況となっている一方、倫理観や社会・文化的な規範に反する行動をAIが行ってしまい、問題が生じるリスクも抱えている。したがって、AIが得意な領域はAIに任せつつも、人が適切なタイミングで確認し、人にしかできない判断を行うという仕組みが今後は重要になる。

AIを相棒に ~バディAI~

AIがタスクを設計し実行まで行うようになると、AIの適切なコントロールが重要性を増す。これは人とAIの関係をどう構築するかという問いでもある。弊社は、AIをバディと位置づけ、人とバディAIが協働して目的を達成する関係性が必要だと考える(図表2)。一人一人の従業員にバディAIが配置され、バディとタッグを組みながら人とAIが共に経験・学習し、互いに特徴やクセを理解し合いながら仕事を進めるような世界観である。人はバディAIとの会話に基づいて仕事を進める。バディAIは様々なシステムや他のAIと連携し、人の指示に基づいて仕事を遂行する。物事の重要性やリスクに関する判断など人にしかできない仕事については、適宜バディAIから人に対して依頼を投げかけ、AIだけで暴走することがないようにする。AIをバディと位置付けることで、人が自らのバディAIについての責任を持つことが重要なのである。

未来の銀行

未来の銀行は、顧客対応や業務の中心にAIを据える。顧客に対する深い理解など、銀行固有のデータをAIに学習させることを競争源泉とし、P2PプラットフォームやバンカーAIなどを通じて、従来の決済や融資の範疇を超えて、顧客の将来をプラスに持って行くためのソリューションを提供し対価を得るようになる。AI銀行も誕生するだろう。AIの質問に回答していくと、融資条件が提示されるなど、インターフェースもオペレーションも全てAIが担う銀行だ。

未来の銀行の人材タイプは、事務人材や管理人材においてAIへの代替が加速することによって、「価値を創る人材」と「価値を届ける人材」の2つに収斂される。いずれの人材においてもAI活用は必須となり、人は過去の経験から自分ならどう対処するかをAIに学習させ、大抵の仕事はAIに代行させるようになる。自分のクセを理解したコピーを作ることで、ルーチンから解放されるのである。また、過去に行った大規模プロジェクト、大規模システム開発など、経験値があるものはAIが再生産してくれるようになる。そうすると人は常に経験のない未踏の分野の開拓に集中できる。人は、常に未踏の新しいテーマに集中することになるため、人類の進化、サービスの進化は一層加速するであろう。

弊社としては、本邦銀行がAI時代の新たな銀行の姿を模索し、競争優位を構築するお手伝いが出来れば幸いである。

※FSアーキテクトは、金融業界のトレンド、最新のIT情報、コンサルティングおよび貴重なユーザー事例を紹介するアクセンチュア日本発のビジネス季刊誌です。過去のFSアーキテクトはこちらをご覧ください。

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