COVID 19は顧客の消費行動や従業員の働き方を大きく変化させた。そしておそらく元の環境に戻ることはないと言われている。

オンラインでの消費者層が拡大し、従来は対面偏重だった商材・サービスもオンラインで消費されるようになった。結果として、従来の対面セールス完結モデルの重要性は低下している。また働き方も大きく変わり、採用戦略・囲い込みのために、リモートワークを前提とした働き方にシフトする企業も増えている。総じて、COVID19によって、企業の営業・顧客サービス活動は大きな変化を迫られたと言える。

こうした環境変化を踏まえ、今後のセールス・サービスやビジネス全体として目指すべき方向性について本稿で考察していく。

COVID-19の“ヒト”への影響

オンライン消費の拡大

COVID-19を契機に直近オンラインで日用品を初めて購入した人は全年代で20% を占めており、特に今までデジタルとは疎遠だっただろう56歳以上の中高年層では34%にも上る。また今後もオンライン消費の継続を考えている人は全体の37%を占めると言われている(図表1)。

また、オンライン消費対象についても、国内外において、従来はオンラインの対象になりにくかった商材も対象に拡大している。中国では不動産までもがオンラインで購買され始めており、主要な自動車メーカーもオンラインでの購買モデルを試行している。

今後も、オンライン消費が顧客層と商材の両面で加速度的に拡がりを続けていくと考えられる。

リモートワークを望む従業員の増加

若い世代ほどリモートワークの継続を望んでいることが弊社調査からも明らかになっている。COVID-19影響を受け、満員電車での通勤などは依然として避けられ、今後もこの傾向は継続していくと考えられる(図表1)。

これに応えるために、リモートワーク環境整備を本邦金融機関も進めていっている。

COVID-19の営業・サービスへの影響

次世代型セールスの方向性

顧客や従業員の行動変容によって、企業も変化の必要に迫られている。セールスに関しては、オンラインでの消費が増えることで、これまで顧客相談によりニーズを喚起して契約に結び付けていたコンサル型モデルが困難に面しており、営業戦力を面で配置して戦うモデルの見直しが迫られつつある。リモートセールスを金融機関でも推進している段階だが、面談をリモートで出来ることは最低条件で、いかにそこに至る顧客動線をリアル・デジタルで再構築するかが問われている。

総じて、より顧客主導な営業の在り方へのシフトが加速する中で、新規営業・契約時だけをデジタル化していく視点のみならず、より長期での顧客との信頼関係構築が出来るモデルを各社模索する必要があり、自社だけでなく異業種連携を前提としたモデルにも目を向ける必要があると考えられる。また、リモート化することでコミュニケーションもデータ化されるため、このデータを有機的につなげて、パーソナライズされた営業接点へと進化させていくことが潮流となっていくと考えられる(図表2)。

次世代型顧客サービスの方向性

サービスに関して、感染予防のために各社は三密の象徴となってしまったコンタクトセンターを、リモート化する必要に引き続き迫られている。在宅でも顧客との応対が出来る基盤を作りつつ、コスト最適化するモデルを志向する潮流が続くと考えられる。

従来のヒトが全て応対するという価値観を見直し、一部自動化されたチャットなどのデジタルコミュニケーションに任せる部分、ヒトとデジタルを組み合わせる部分、ヒトが応対を続ける部分を切り分ける必要がある。また、結果として、コミュニケーションがデータ化されることで、予測型の応対や、個に合わせた応対といった進化が予測されており、顧客体験自体の向上も期待されている。

更には、これらのコミュニケーションデータやデジタルとヒトのハイブリッドな基盤を活用し、解約予兆検知やアップセル・クロスセル機会をコンタクトセンターが主体的に取りに行くことも予想されている(図表2)。

セールスとサービスの融合へ

ビジネス自体が顧客起点で再定義を迫られる中で、従来の営業と顧客サービスの境界は大きな障壁になりえる。境界をなくし、顧客とのコミュニケーション全てをデータとして資産化して、真の意味でのオムニチャネルモデルを構築することによる顧客に寄り添いニーズを喚起していくモデルが求められている。

次世代型ビジネスの在り方

顧客を中心としたWin-Winの本質

顧客との関係の強化を志向する動きは大規模プラットフォーマーとの間でも生まれてきている。例えば、海外ではナイキがAmazonでの販売を中止、国内でもアパホテルは楽天などのOTA( Online Travel Agency)から距離を取り自社EC 強化にシフトするなどプラットフォーマー離れが起こっている。こうした現象が起こる理由は、プラットフォーマーに対するコスト負担もさることながら、顧客に関するデータが自社に入ってこないことが最大の理由と考えられている。

更に、長期的なWin-Win関係という視点に立つと、アパレル業界などでは、顧客のクローゼットの中身をデータとして補足し、最適な提案をし続けることを志向し始めている。また、Netflixなどサブスクリプション型動画サービスも、作品単位ではなく、シーン単位で顧客がどこを観ているかをデータで把握し、次に観るべき作品を提案し、更には、Netflixオリジナルでの新たなコンテンツの企画にも活用している。いずれも自社ビジネスにおける顧客との長期関係性を前提とした時のコアな情報をデータ化し、そこから新たな価値を生み出そうとしている。

こうした動きを、金融業界に置き換えた場合、長期的な顧客との関係においてデータ化し、資産化すべき領域はどこになるだろうか。証券業界であれば、顧客の運用商品の価格推移情報に加えて、運用目的や運用スタンスといった情報にも目を向け、そこに変化がないかを補足する必要がある。そうすることで、証券ビジネスとして成果を分け合うモデルへのシフトだけでなく、投資商品に限らない顧客の潜在ニーズの検知や異業種連携モデルが生まれる可能性がある。

従業員エンゲージメントの重要性

海外では、TwitterなどがCOVID-19を契機にリモートでの働き方を恒久的に認めるようなり、柔軟かつ安心して働ける労働環境を提供しようとしている。この背景には、優秀な従業員を採用・雇用継続するために、在宅ワーク環境が必須条件に変わってきたという事情がある。

COVID-19の影響によってリモートワークが前提となるということは、従業員はこれまで以上に場所や時間の制約がなくなり、柔軟な働き方が可能になることを意味している。例えば、従来は生命保険の営業チャネルとして“生保レディ”という表現が広く認知されていたが、背景には、生保営業が時間や場所の制約のない数少ない職場だったという要因も影響していた。今後、他の仕事も時間や場所の制約がなくなるとすると、生命保険のセールス担当以外の職業を選ぶ可能性が生まれることになる。つまり、企業は従業員を選ぶ側から、選ばれる側に変わる可能性がある。

次世代型営業や顧客サービスを考える中でも、優秀な人材に自社で活躍し続けてもらう環境をいかに整備していくかを同時に検討していくことが求められている。

顧客からの信頼から、社会からの信頼へ

これまで見てきたように、顧客や従業員の変化を受け、企業もその在り方を改めて問われるフェーズにきている。今年のダボス会議では環境対策が話題をさらったが、より大きな潮流として顧客からの信頼、ひいては社会からの信頼を、いかに企業が長期的な視点で再構築していくかが問われている。

別の見方をすると、自社の利益追求と幅広いステークホルダーに対する社会課題解決という2つのミッションを長期的関係という視点から取り組む必要が生じてきているとも捉えられる。単なる営業・顧客サービスのリモート対応を超えて、本邦金融機関においても、表層的なCSR ではなく本質的な本業と一体での社会課題解決モデルへのシフトが起こっていくことを期待したい。

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