New ITと基幹系システムを繋ぐHUB Framework構築

証券業界を取り巻く環境の変化が速まるなか、既存ビジネスの要求に応えつつ、New ITを効率的かつ迅速に取り込むためには、変化に柔軟に対応するプラットフォームが必要となる。

変化に柔軟に対応するプラットフォームの構築には3つのポイントがある。基幹系システム/機能のマイクロサービス化、New ITと基幹系システムを繋ぐHUB Frameworkの構築、システム技術を包括管理するDev Opsの導入である。

本稿では、弊社の考えるNew IT時代の証券システムプラットフォームとして、これらの概念を紹介し、HUB Frameworkの実現に向けてAIを題材とした一例を述べていきたい。

1. 証券システムを取り巻く環境

金融業界は装置産業とも呼ばれ、業務効率化のために巨額のシステム投資を行っている。なかでも証券システムは、そのビジネス特性に起因して非常に多岐にわたっており、常に変革を求められ続けている。

  • 商品/サービスの多様性・複雑性
  • 短期間で変更される金融法規制
  • 海外現法、関連企業展開
  • 営業チャネルの多様化等

競争力を維持・向上させるためには、断続的に各システムをアップグレードし、ビジネス要求や技術動向の変化に絶えず対応する必要がある。そのため、いかに効率的にシステム更改を行うかが経営課題の一つである。

2. 最新テクノロジーと変革の方向性

一方、フィンテックの潮流に代表されるNew IT活用による変革の波が押し迫っている。代表的な変革の方向性を紹介する。

AI (人工知能)を用いた業務革新

AIを活用した業務革新を推進し、営業力強化、業務効率化、品質向上を図る。ヴァーチャルエージェント(チャットボット)による顧客対応の代替や、言語解析によるコンプライアンス強化等が既に各社で始まっている。

加えて、今後はトレーディング分野でAIアルゴリズム取引が浸透し、収益拡大に寄与すると考えられる。

DWM/VR/ARによる営業改革

デジタルとヒューマンを融合した新しいチャネルを展開することで、幅広い顧客層の要求に応える営業を実現する。既に、タブレット端末上で営業員をサポートするDWM(Digital Wealth Management)が導入され、対面営業プロセスのデジタル化が進んでいる。今後は更にA R(Augmented Reality)/VR(Virtual Reality)技術の活用により「新しい顧客体験の創出」にフォーカスした取組みが進むと予測される。

RPAによる効率化・品質向上

RPA(Robotics Process Automation)の活用により業務を自動化し、コスト削減と共に各業務の品質向上を図る。デジタル化された情報を扱う定型業務に関して、既に多くのロボット化が進んでいるが、AI-OCR技術(Optical Character Reader)の進展により、非デジタル情報の取込が促進され、更に自動化領域が広がるとみられる。

日々新たな製品が生まれているNew IT領域では、今後より一層迅速かつ、効率的にシステム更改を行なっていく事が必要だ。システムとビジネスとの融合段階を意識した「マルチスピードIT」では、フェーズ1・2における製品変化への対応力、New ITビジネス成功のポイントになる(図表1)。既にあるNew IT製品の導入に取組むと共に、将来的に登場するNew ITに対しても効率的かつ迅速に対応出来るプラットフォームを構築しておく必要がある。

図表1 マルチスピードITの実現

3. New IT時代の証券システムプラットフォーム

業界のビジネス特性から来る変化、NewITの潮流に対して、より迅速な対応をしていく為に、証券システムのプラットフォームでは以下3点の考慮が必要と考えられる。

① 基幹系システム/機能のマイクロサービス化

現在証券各社が保有する基幹系システムは長い運用を経て、機能全体が巨大化・複雑化しており、変化に柔軟に対応することができないといったことが散見される。例えば、商品追加において、システム対応が長期化するといった経験はないだろうか。

「マイクロサービス」とは、システム機能を小さなサービス単位に分割し、サービス単位でのポータビリティを可能にしたアーキテクチャを指すが、基幹系システムに適用させることにより、現行ビジネスの変化にタイムリーに対応していくことが重要である。

② New ITと基幹系システムを繋ぐHUBFramework構築

New IT分野では要素技術・製品が目まぐるしく進化しており、基幹系システムの運用サイクル・速度が異なる。このため、基幹系システムとは切り離して開発・運用することが望ましい。例えば、既に導入したRPAが技術進化により陳腐化した場合、業務・システムに影響を与えることなく、製品の入れ替えを行うことが可能かをあらかじめ考慮する必要がある。

この観点に関し、HUB Framework(図表2)の導入を推奨したい。New ITと基幹系システム間にHUBとなるレイヤを構築することで、New ITと基幹系システムを分離し、それぞれの開発・運用サイクルの自由度を高めることができる。

③ システム技術を包括管理するDevOpsの導入

証券システムは、前述のマイクロサービス化やHUB Framework導入に、も支えられ、より一層多様化するであろう。様々な技術、開発言語やテスト手法の差異を吸収しつつ品質を担保し、全体の整合性を確保する為に、DevOpsによる包括的な管理基盤導入が推奨される。

構成管理やデプロイ作業を包括管理し、自動化することで開発に係る管理を省力化しつつ、短いサイクルでサービス間のテストを自動的に実施することで開発上のリスクを低減することができる。

4. AIインターフェースフレームワーク

前章で触れたHUB Frameworkの具体例として「AI」領域におけるフレームワークについて紹介したい。

AI領域はNew ITの中でも特に日進月歩で、AIエンジンそのもの及び関連技術(自然言語解析、音声認識、画像解析、対話ツール等)が進化している。変わりゆく最新技術をいかに柔軟に取り込むべきか、その為にどのようなアーキテクチャを備えておくべきかについて悩む企業は多いのではないだろうか。

図表2 Digital化時代の再構築に向けたプラットフォーム

AI製品への柔軟な対応に向けて、主に4つの機能から構成されるフレームワークを構築し、備える事が必要と考えられる。

業務プロセス制御

各種業務プロセス/システムからの様々なAIエンジン利用要求に対して、応答を処理するための基本インタフェース機能。AIエンジンの振分け、権限制御、応答管理(エラーハンドリング)を実現する事で、各業務プロセス/システムは様々なAIエンジン側の接続仕様を意識することなく実装・運用することが可能となる。

AIエンジンアダプター

各AIエンジン群/オペレータとのアダプタ機能を提供。AIエンジン/オペレータへ応答振り分け制御を行う事で、業務プロセス/システムから様々なAIエンジンへの接続を実現し、進化するAI製品に対応可能とする。オペレータとAIエンジンへの振り分けも制御する事で、技術進歩に対して、常に人とAI技術、それぞれの強みに活かした組合せ変更が可能となる。

データソース制御

社内情報、外部情報へのデータアクセスを制御。AIエンジンがアクセスするデータを一元的に制御し、利用データ、検索エンジンを共通化する事で、変わりゆくAIエンジン/関連システムによらず、基礎となる分析対象データを一定に保ち、常に一定のサービス品質を担保する。

対話ログ蓄積・制御

AIによる処理結果、学習データやノウハウを蓄積し、AIエンジンを変更した場合に再利用する事で、変更後のAIエンジンの精度をいち早く向上。サービス品質を早期に高める事が可能になる。

これらの4機能を有するフレームワークを構築・導入する事で、各業務システムとAIエンジン群との結合が疎となり、システム保守性が高まり、結果として、システム再構築期間を短縮し、品質を早期に高める事が期待できる。

終わりに

本稿では証券業界を取り巻く変革の波に対し備えるべきプラットフォーム、及び、フレームワークについて一般論を述べたが、各社が抱える状況は異なる。実際の業務においては、各社を取り巻く環境や資産状況を把握・分析した上で、目指すべき具体的な姿を明らかにしたうえで、対応施策と優先順位を考える必要がある。

弊社としては、各社の状況に即した支援を行い、変革に寄与したいと考えている。