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ブロックチェーンを活用したトークン(デジタル権利証)に注目が集まる今、STO(セキュリティ・トークン・オファリング)は新たな資金調達手段としての期待が高まり、2020年には法制化、2022年春には法的要件を満たしたプラットフォームが整備されました。

今後、さらなる取引の活性化が見込まれる中、今回の金融ウェビナーでは三井住友信託銀行株式会社 常務執行役員 益井敏夫様三井住友信託銀行 デジタル企画部 兼Trust Base株式会社 取締役 CEO 田中聡様を招き、デジタルアセットビジネスの全体感からトークン発行・取引・流通に必要なプラットフォームについて議論いたしました。

デジタルアセットビジネスの全体感

デジタル権利証であるトークンの発行、取引、流通によるデジタルアセットビジネスは、現実世界と、仮想世界の2つの方面からの流れがありその双方において新たなビジネス機会創出の期待が非常に高まっています。

現実世界については、有価証券や所有権といったリアルな金融商品やサービスの利用券を裏付けとしたトークンがあり、仮想世界の方面ではデジタルアートやゲームアイテムといったデジタル世界におけるNFTが注目を集めています。

デジタルアセットビジネスにおいて取引対象になるトークンは、不動産や金銭債権などのST(セキュリティトークン)、優待会員権などのUT(ユーティリティトークン)があり、近年ではST×UTによる商品の魅力づけも活性化しています。

STの発行動向については、アクセンチュアの試算によれば、10年後には世界で50兆円規模の市場になると予測されています。海外では未上場株式の発行が先行していますが、国内においてもSTの発行額は2021年から2022年の1年で約3倍に急成長しています。そのうち約9割を占めるのは不動産のSTですが、不動産だけでなく商品のバリエーションが増えつつあることも注目しておきたい点です。

また、NFTについては大手企業の参入が相次ぎ、市場規模は2020年の約100億円から2021年には2兆円以上という、爆発的といえる成長を遂げています。現状のNFTについては過熱感があると言わざるを得ませんが、その動向は引き続き注視していくべきでしょう。

デジタルアセット取引プラットフォーム「axia」の活用

ここからは三井住友信託銀行様のデジタルアセットビジネスの取り組みをもとに、プラットフォームのあり方について紹介していきます。

三井住友信託銀行では、アクセンチュアが開発したデジタルアセット取引プラットフォーム「accenture token exchange infrastructure」(axia)を活用し、デジタルアセットのマーケットプレイス構築を目指しています。

axiaの特徴は、STの取引に対応しており、お客様のビジネスニーズに応じてプラットフォームをデザインできる高い拡張性を有していること。また、社内システム・社外システムとはAPI経由で接続することができ、効率的な導入・運用も可能となっています。さらに今後は、NFTUTの取り扱い、ステーブルコインによる決済などの拡張も予定しています。

三井住友信託銀行の強みを生かし、新たな投資機会を提供する

三井住友信託銀行が考えるデジタルアセットビジネスにおける信託機能の役割とは、株式や債券といった伝統的な資産と同様に、STの裏付けとなる有価証券の発行審査と期中管理を行うこと。つまり、商品の「目利き力」を生かしたゲートキーパーとしての役割です。

三井住友信託銀行の益井様によれば、STはお客様に対して新たな価値を提供できる機会であるといいます。提供価値の一例としては、大企業や機会投資家向けに販売してきた商品や信託サービスを小口化し、より多くのお客様にサービスを提供できることが挙げられます。

その他にも、グリーンボンドやESG債、特許、芸術作品などの多様な資産を裏付けとし、社会課題である資金循環に貢献することも、重要な提供価値のひとつです。

そして今後、デジタルアセットビジネスが拡張していく中でも、長年の歴史を生かした安心・安全な取引機会を提供していくことが三井住友信託銀行の重要な責務です。

三井住友信託銀行が描くデジタルアセットビジネスの将来像は、商品の組成力やアレンジ力を生かしてあらゆるものをトークン化し、マーケットプレイスを介して、多様な販売チャネルで世の中に提供していくこと。同じ想いを持った人の商品を安心・安全に購入できる場所と仕組みが生まれれば、世の中が変わっていく可能性もあるでしょう。

こうした将来像を見据え、三井住友信託銀行は暗号資産取引所大手のビットバンク社との共同出資によるデジタル資産管理企業「日本デジタルアセットトラスト」を設立予定であり、メタバース上での決済需要に備えた日本円に連動したステーブルコインの発行も検討中であるなど、デジタルアセットビジネスの未来に向けた具体的な取り組みを始めています。

さて今後、デジタルアセットビジネスがさらに拡大していくことは間違いありません。デジタルアセットビジネスの現在地を認識し、未来を考える上で、自らの強みを徹底的に生かしながら新しい投資機会の創出に挑む三井住友信託銀行の取り組みは、非常に参考になるのではないでしょうか。

本レポートではウェビナーの内容を抜粋してお伝えしましたが、全編が収められたオンデマンド版ではアクセンチュアのメンバーを交えたデジタルアセットビジネスに関する議論の模様も視聴可能となっております。ぜひ併せてご覧ください。