今回のウェビナーでは金融業界の外目を向け顧客体験の向上でビジネス変革している事例をご紹介します。ビジネス自体の再構築や新たな価値の創出を可能にする企業体「Business of Experience(BX)」の実現を支援するアクセンチュア インタラクティブのメンバーが幅広い業界での事例を通じ、いま金融業界に求められている変革のポイントを解説します。豊富な図版と動画、事例解説とディスカッション、視聴者からのQ&Aで構成された約60分の映像コンテンツです。ぜひご視聴ください。 

企業中心から生活者中心への転換 

そもそも顧客体験の向上とは何でしょうか。大前提となる考え方従来の企業中心(ビシネス)から、生活者中心(エクスペリエンス)への転換であるとアクセンチュア インタラクティブでは定義しています。 

そのためには企業を中心とする産業考えるのではなく、生活者は今なにを必要としているのかを見つめ、生活者の行動の変化を予測しながらアウトプットを出ことが重要です。オペレーションやテクノロジーを基盤として、それを実現するサイクル目指すことがBXの具体的な姿あるためBXは「顧客にとって価値ある体験とは?」自社いかけることから始めなければなりません。 

事例|ドッグフードブランドPedigreeが解決した、愛犬家のペイン

スマートフォンの普及以来、愛犬とのセルフィー(自撮り)はオーナーにとって日常的な行為となりました。しかし犬はなかなかカメラを向いてくれません。こうした生活者のペインをシンプルなアイデアで解決し、売上24%向上、ROI 8.6%向上、SNSでの「いいね」が340万というヒットを生み出したのが、ドッグフードブランドPedigreeを販売するマース社のニュージーランド法人です。大好きなおやつに視線を向ける犬の習性に目をつけ、おやつをスマホ上部に固定するシンプルな器具を提供したところ爆発的な人気となりました。このように、エクスペリエンスは身近な存在なのです。

事例|ゲーム、映画・音楽、交通(モビリティ)のゲームチェンジ

様々な業界で起きているゲームチェンジの一例をまとめたものが下の図です。ゲームや映画・音楽といったエンタテインメントや、自動車に代表されるモビリティは、黎明期、普及期、拡張期と段階を経るごとに形を変えて生活の中に浸透してきました。これらは技術や環境の変化に合わせて柔軟にサービスの形を見直しており、加速度的に技術変化が起こる今の時代、変化を前提として商品・サービスを提供していく姿勢がより重要になります。

この時に起きるのが、競合の意味さえも変わってしまう現象です。金融業界内において他の金融機関は直接的競合ですが、「体験の提供」という視座で俯瞰すると通信や小売、サービス企業が新たな競合となりえます。さらに、GAFAクラスの企業やそれらに匹敵するパワフルなデジタル企業が体験を軸としてマネーに絡む新サービスを展開したらどうなるでしょうか。

このように、現代のビジネスは勝者の定義さえ曖昧な、混沌とした予測不能の時代に入っているのです。

事例|デジタルの活用による体験価値で顧客満足を向上させる東京ディズニーリゾート、スターバックス、ヤマト運輸

業界に破壊的創造を与えるインパクトは、デジタルを駆使することによって生み出されています。ウェブロイヤリティスコアを集計しているトライベック社によると「ユーザビリティ(使い勝手)」「エクスペリエンス(体験による満足度)」「ロイヤルティ(繰り返し利用したくなるリピート化)」の3要素の融合がCX(顧客体験)であると定義されています。

同社が公表しているランキングの上位はサービス業やメーカーが独占しており、1位は東京ディズニーリゾート、2位はスターバックスコーヒー、3位はヤマト運輸、4位はトヨタ自動車、5位はアップルとなっています。上位20位以内に金融機関は1社も存在しません[1]。

よって、金融機関は「そもそも金融とは何か?」という原点に立ち返って自社の存在意義を問い直し、デジタルの視点で生活者の体験を拡張するエクスペリエンスを提供できさえすれば、またたく間に業界をディスラプトするリーダー企業へと飛躍できる可能性を秘めています。

金融業界が考える「お金」の定義や常識で自社を束縛せず、生活者のトランザクションや売買行為、サービスを享受する手段に目を向けることが必要です。単なるWeb化やアプリ化とは一線を画す体験に金融のエッセンスを加えれば、まったく新しい金融サービスが生まれるでしょう。そのような「これまでの“当たり前”を打破する体験創出」を金融機関は実現していかなければならないと言えます。

事例|時間・場所・慣習の壁を超える体験を創出する自動車、化粧品、医療・健康業界

  • 自動車|BMW、メルセデス・ベンツ

現代社会はコロナ禍によって一変し、それまでのビジネスの常識さえも覆されています。従来であれば高級車はディーラーの対面営業で購入するものでした。高額商品をネットで買うなどありえないという常識に、企業も生活者も縛られていたからです。しかし現在、BMWやメルセデス・ベンツでは2000万円以上するクルマがWeb経由で購入されています。

  • 美容品・化粧品|資生堂、ボビイ ブラウン

資生堂では美容部員の方々を動画配信に起用してライブコマースの成功事例を生み出していますし、ボビイ ブラウンではメイクアップアーティストと共にInstagramでメイクのハウツーを提供し、人気を博しています。こうした「人材のアセット」は大手通販会社さえも持っていないものであり、美容品・化粧品の新しい売り方として先行しているといえます。

  • 医療サービス|平安保険

中国の平安(ピンアン)保険は、AIが問診して医師をマッチング、オンライン診察と処方を受け、医薬品が自宅へ配送される24時間対応のサービスを開始しています。医療とは病院に行って待ち時間を耐えながら受けるものという常識を打ち砕いており、患者の体験価値にフォーカスした医療を実現しているケースです。

  • 運動器具とフィットネスサービス|Peloton

アメリカのPeloton社のサービスではフィットネス機器が自宅に届き、Webカメラを使って専属インストラクターのレッスンを受けられる「在宅フィットネスのサブスクリプション」を提供しています。これが外出を自粛している生活者のニーズにフィットし、同社の爆発的成長を実現しています。

  • 金融機関が取るべきアクション

一方で金融業界には、遵守すべき法律や規制があり、生活者の「もっと変えて欲しい体験」を率直に実現することは難しいといった事情があります。しかし、個々のサービスの中でも可能な体験改善の余地は少なくありません。たとえば契約時の複雑さの解消や煩雑な手続きのシンプル化などは工夫できるといえるでしょう。

生活者に新らしい体験価値を提供する、1200名のデザイナー集団「Fjord」

アクセンチュア・インタラクティブに2013年にジョインし、2019年に東京にもスタジオを構えたデザイン・エージェンシーFjord(フィヨルド)は、デザインのケイパビリティをリードしているデザイナーの組織です。

アクセンチュアは企業のマネジメント層と共に変革を推進していますが、Fjordはお客様の先にいる生活者に目を向け、デザインの力とお客様との共創の掛け合わせによってブランド価値向上を手がけています。

「デザイン」と一口にいっても、Fjordが提供しているのはアプリのUIやビジュアルだけでなく、生活者と企業の間にあるすべてのタッチポイント(モバイルアプリ、店舗、Webサイトなど)での一貫性のある体験のデザインです。世界中の拠点で活躍している約1200名のデザイナーがケイパビリティを提供しています。

事例|UAE最大の通信キャリア、EtisalatのDXをビジネスとデザインの両面で支援

「体験を変える“デザイン”とは?」から考えるFjordの手がけた事例の1つがEtisalatのDXです。コールセンター改革から始まったこの事例では、全社のブランドの根幹をなすポータルアプリのリニューアルやWeb、店舗など各チャネルの情報統合を実現。新規ブランドの設立コンセプト立案の支援などを経て、グループ収益7%増やブランド価値40%向上を実現し、中東アフリカ地域におけるブランドランキングで1位を達成しています。

金融機関に求められるチャレンジの3つのポイント

最後に、日本の金融機関に求められるチャレンジについて考察します。体験の創造における企業変革のポイントは3つあり、各ポイントへの対応が具体的な取り組みだと言えます。

1「企業課題 < 顧客課題」

2「Speed to “Customer”」

3「変化への対応力」

お客様自身の企業課題よりも生活者である顧客の課題に重点を置き、生活者のペインの解決にリーチすることが第1のポイント。また、サービスは生活者の目に触れて初めて価値が評価されます。机上での検討だけでなく、プロダクトとしてマーケットへ素早く投入して改良を繰り返すことがこれからの企業変革における第2のポイントです。しかも、ビジネスの常識や環境はまたたく間に変化します。変化を恐れて身構えるのではなく、成長のために自社の変革を視野に入れて積極的な取り組みを進めることが第3のポイントとして重要です。

今回のウェビナーでは、金融業界の外部へと目を向け、最新の顧客体験の創造に取り組んでいる事例を紹介しました。本記事の内容は、オンデマンド視聴可能なウェビナーでより詳しく紹介しております。ハンズオン資料のご提供ほか、豊富な図版を交えた説明、視聴者からのQ&Aを含む約60分の映像コンテンツとなっておりますので、ぜひご視聴ください。

アクセンチュア金融サービス本部ウェビナー第29回のご視聴はこちら

[1] 出典:トライベック・ブランド戦略研究所2019年調査