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AIの活用が金融機関において進んでいる。一方でAIの特徴を正しく理解せずに導入しているために効果が限定的であり、更には道半ばでAIの活用自体をあきらめてしまうケースも少なくない。そこで、本稿ではAI活用のポイントを説明するとともに、そのポイントを踏まえて弊社が開発したAIプラットフォーム(AI-Hub)をご紹介したい。

進むAI活用とその課題

“AI(Artiticial Intelligence、以下AI)” という言葉は以前より存在していたものであるが、現在ほど一般的に認知され、かつ大きな期待をもって迎え入れられていることはなかったように思う。AI将棋 “ponanza”、AI囲碁“Alpha-Go”が世界トップクラスの棋士を下したニュースや、AIを搭載したスマートスピーカーの一般消費者への販売によって、その存在と有用性が広く知られることになった。最近ではアマゾンがAIを搭載した家庭用ロボットの販売に向けて開発を行っていることが話題となった。

また、我が国の国家戦略にも、将来の就業人口不足を補うための一手段として、 “ロボティクス、AIの積極な開発・展開” が謳われていること、弊社調査でも、「AIが仕事の在り方を変え、人間と機械との新たな関係性を生み出すこと」で、例えば日本の成長率が三倍以上となる試算結果がでていることからも、AIへの期待値の高さとその重要性が窺い知れよう。

そのような中、本邦金融機関においても、カスタマーエクスペリエンス向上や業務効率化の観点から、AIの活用が進んでいる。例えば“LINE”などのインターフェースを利用し、顧客や社内ユーザからの問合せを受付け、その回答を行うチャット形式のAIや、画像認識の技術を活用し手書き書類の電子化を行うAI-OCRの導入など多くの事例がみられる。現時点では単体でのAI活用に留まっているが、将来的には複数のAIを組み合わせることによって、その適用領域が大きく広がっていくことが予想される。

一方で、AIの導入を行ってみたものの、当初期待していた通りの“効果(満足)” が得られているかというと、その割合は高くないように思う。AIは、従来のシステムとは異なり、データを蓄積し継続的に学習を繰り返すことで、その性能(価値)が向上していく特徴がある。その特徴を正しく理解し、適切な導入アプローチを採用しなければ、十分な学習前の状態にもかかわらず効果への期待ばかりが大きくなってしまい、その結果、AIに対するある種の失望と共に、導入を途中であきらめてしまうといった残念なケースが少なくない。そこで、本稿次章では、弊社がこれまでにグローバル/国内で数多くのAI導入を支援してきた知見・経験から、その活用や導入に当たってのポイントを説明する。

図表1 AI活用のアプローチ -AI活用の要諦-

AI活用における3つのポイント【図表1:AI活用のアプローチ】

① AI活用領域の見極めとヒトの“協働”

AIは、目的に合わせて複数の要素技術(画像や音声認識など)を組み合わせて利用するものであり、現時点で万能で完璧なAIは存在しない。そのため、目的や用途に照らして最適なAIソリューションを選定することは当然のことながら、AIの限界を正しく理解し、AIを活用する領域と人手でカバーする領域を正しく見極めて、AIとヒトが“協働”するプロセスを再構築していくことが重要となる。

弊社がコールセンターにおいて、人間とVirtual Agent(VA)の組み合わせによる顧客満足度を調査したところ、AIとヒトがそれぞれの得意領域を担当した“協働” パターンが、最も顧客満足度が高いという結果となっている。(ヒトのみ68%、AIのみ60%、ヒトとAIの協調88%)。

② 切り替え可能で複数AIを組み合わせることのできる構成に

現時点でのAIは万能ではないものの、その技術は日々急速に進化しており、有力な技術やプレーヤーの移り変わりが激しいことも特徴である。現時点で最良なAIソリューションが、将来も最良のソリューションであるとは限らないため、その技術動向を常に注視し、最適なAIソリューションに容易に切り替える、または追加することができる構成にしておくことが必要である。また、現在はチャットやAI-OCRなどの単体のAIソリューションを用いた単一のサービス提供に留まっているが、より高度なサービスやプロセスを提供するためには複数のAIソリューションを組み合せていくことが必要であり、複数のAIソリューションを前提として容易に追加と変更ができる構成にしておくことが求められる。

弊社では、各要素技術に強みを持つ複数の企業・研究団体と連携し“A I TECHNOLOGY RADAR”として、AI先進企業リスト(200社以上)を月次で更新しており、皆様にも是非有効活用頂きたい。

③ AI学習データの見極めと活用

従前のシステムとは異なり、AIは学習を繰り返すことで性能が向上する仕組みとなっており、用途に沿った適切な質・量のデータが必要となる。

例えば、チャット形式のAIであれば、正しく認識、回答できなかった会話に対して、継続的に会話データを用いた学習を行っていく必要がある。AI-OCRであれば、誤読した文字、文章に対して識字精度を向上させるために手書き文字データ投入して学習を繰り返すことが必要で、そのためには様々な学習用のデータを自由に活用できることが前提となる。該当データがAIソリューションベンダにある場合、自社のAI学習に対しての利用であれば問題はないが、例えばソリューションの切り替えがあり、新しい他社のAIソリューションに対する学習であれば、そのデータを利用することが難しくなる。従って学習データは自社で保持することが必須である。

また、仮に手元に大量データがあっても、偏った学習データでは偏った判断をするAIとなってしまう。このことは過去に、ユーザとの会話を自動学習するチャットボットが差別的で不適切な発言をするようになったことで世の中を驚かせた。このようなことを防ぐためにもデータを正確に収集し、不正確なデータを機械的に検出する仕組みや組織が必要となる。

図表2 アクセンチュアが開発したAI Hubプラットフォーム

AI活用のためのプラットフォーム:AI-HUB【図表2:AI-Hub】

これまでにAI導入における課題、AI活用のポイントを説明してきたが、弊社ではこのポイントを踏まえたAIのプラットフォーム(AI-Hub)を構築した。このプラットフォームを活用頂くことで、正しく・早くAIを活用することができるためご紹介したい。

AIのHub – AIエンジン群の指揮者・編曲家

さまざまなAIエンジンを統率するソフトウエアフレームワークとAIアダプタが標準装備されており、日進月歩のAI関連技術を適材適所に配置し、技術進歩やトレンドに合わせて組み合わせるといった柔軟な置き換えが実現可能となる。

情報のHub – 情報の一元管理

全ての情報がAI Hubを経由することで、各社のAIクラウドサービスに依存せずに学習データやノウハウが自社に蓄積されるため、自由にデータを活用することが可能となる。

ヒトとAIが連携するHub – ヒトとAIを適材適所で連携

これまでの弊社の知見・経験から、ヒトとAI技術、それぞれの強みを理解した上で、最適な協業パターンの標準が装備されており、それを活用、調整することで個社に最適なAIを活用したプロセスやサービスをいち早く展開することが可能となる。

最後となるが、AIで企業のデジタルブランドを形作っていくためには、AIのスペシャリストだけでなく、あるべき業務のビジョンを描き、それに向かってプロジェクトをナビゲートするコンサルタント、人間の感性に訴えるUIUXデザイナーがチームを組んでサービス開発を進める必要がある。弊社では、その各専門家集団が集う拠点として「アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京」を開設しており、先進技術を使った新しいサービスを皆様とともに作り上げる舞台が整っている。こちらも是非ご活用頂きたい。