本ブログは、2019年10月30日(水)に開催されたセミナーインフォ主催「FINANCE FORUM ブロックチェーンがもたらす金融パラダイムチェンジ」における講演内容を記事にしております。
アクセンチュアが実施した調査によると、業界問わず多くの企業が長期に渡りディスラプター(創造的破壊)の脅威にさらされている。
金融業界においてもFinTechの盛り上がりは一過性のものではない。長期的にディスラプターの影響を受ける可能性があるなかで、イノベーションをどうビジネスに取り込んでいくかを考えていくことが重要だ。
デジタル時代においては、次の3つの視点でビジネスに取り組むことが可能になる。限界費用を落とすことで、これまでお客様になりえなかった方々を”Include”してサービスを提供すること、お客様ひとりひとりに”Personalize”した新しい体験を提供すること、インターネットやブロックチェーンを活用してグローバルに”Connect”することだ。アクセンチュアは、”Connect”、すなわち「つながる力」こそがビジネスにおけるデジタルの本領であると考える。あらゆるパートナー企業とデジタル・エコシステムを形成し、総合力を発揮することで新しいイノベーションを取り込むことができるようになる。
ブロックチェーンは、デジタル・エコシステムを形成するにあたり大きな役割を果たす技術だ。自社内の金融トランザクションだけ見ていても、その裏側にある顧客の本質的なニーズを捉えることは難しい。ブロックチェーンを活用してリアルビジネスを行う異業種と協業すれば、そこから得られたデータを分析することでまったく新しい価値を生み出していくことができる。
実際のブロックチェーン活用にあたって注意すべきポイントについて共有したい。アクセンチュアは、ふくおかフィナンシャルグループの子会社であるiBankと共同で、ブロックチェーンのシステムを1年前に本番稼働、運用開始している。iBankが提供しているWallet+内のポイントをブロックチェーンで管理するシステムだ。ブロックチェーンの導入により、数百万人の会員のポイントを支える基盤として1ポイントも欠損することなく運用できている。
ブロックチェーンシステムの開発を成功に導くには、その技術特性をあらかじめ理解することが重要だ。第一に、ブロックチェーンはデータの「完全性」にフォーカスした技術であるということ。検証合意したデータだけが格納され、記録されたデータは耐改ざん性を備えていることが、システム開発において正規の改修やテストデータ投入を困難にさせ、開発スケジュールに影響を及ぼす。第二に、ネットワークシステムであり、データが届かないというリスクを持っていること。第三に、コンソーシアム型での開発形式を取ることで多くのステークホルダーがかかわることだ。
これらの3つの特性を踏まえ、ブロックチェーンシステムの開発においては「抽象化」「再試行」「余白」の3つの視点を持つことが有効だと考える。複数のステークホルダーの意見を「抽象化」して全てのステークホルダーが使えるものにすること、データが届かない場合に相手先を変えながら「再試行」する仕組みを作ること、あらかじめ改修を見越した「余白」をデータに設計することだ。これら3つをあらかじめ認識したうえで開発に取り組むことにより、ブロックチェーンシステムの開発を成功に導き、システムそのものを安定的に継続運用できるようになるだろう。さらには、ブロックチェーンによりステークホルダーの皆様をつなげたデジタル・エコシステムの形成を出発点に、顧客のデータを集め、真のニーズを理解してより良いサービスを作っていくことができるのだ。アクセンチュアでは、自社における開発・運用経験を踏まえた情報を金融サービスブログやウェビナーを通じて提供している。ご関心がある方はぜひご活用いただきたい。
※出展:The Finance「FINANCE FORUM ブロックチェーンがもたらす金融パラダイムチェンジ<アフターレポート>」詳しくはこちらをご覧ください