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持続的な成長には「事業の変革」と「人財の変革」を同時に着実に進めることが不可欠だ。

一方で、一部の大手行を除き多くの銀行で「投資」「人財」といったリソースの制約に直面しているケースが多い。

弊社としては「バリューアップ型変革プログラム」と呼ぶ包括的な手法で邦銀の経営改革をご支援させていただきたいと考えている。

「変革の支援」から「変革の請負」へ ⸺ 2023年も意欲溢れるクライアントに皆様と、世の中に新しい価値を、経営に目に見える成果をもたらすプロジェクトをご一緒させていただけることを願っている。

邦銀の成長性

厳しい経営環境下において意欲溢れる多くの邦銀が変革プログラムを推し進められている。

足元の成長性はどうなっているのか。収益と経費の増減の差分を「成長性」と定義し、日本と同様に低金利下にある欧州主要行とともに最近の動向を分析した(図表1)。

2018年から2022年の期間、欧州主要行はプラスの成長を実現している(Deutsche+6.9%、UBS +4.3%、Santander +0.5%、BNP +0.5%)。一方、同時期の国内行の多くがマイナス成長にとどまっている。

その要因は収益面の成長に苦戦している点にもある。しかし、同時に経費のマネジメントに課題がある点にも着目すべきだ。多くの邦銀で収益の伸び以上に経費が増加しているのが実態だ。

国内の銀行業界全体をマクロ的に見ても、この10年ほど収益の増減に関わらず経費はほぼ横ばいだ。経費の固定化・収益外圧への弱さが、投資原資創出、すなわち成長の阻害要因になりかねない。

3つの視点

持続的な成長には、3つの視点での投資・構造改革が不可欠だ。

①「事業効率化」投資 – 既存事業の抜本的な生産性向上。既存事業の収益規模に見合ったコスト水準にオペレーティングモデルをゼロベースでリデザインする。

②「事業高度化」投資 – 本業の収益性の強化。社会や顧客のペインポイントに着目したデジタルディスラプトなどでマーケットシェア獲得を狙う。

③ 「新規事業育成」投資 – 新たな収益減の獲得。顧客基盤・情報・人的リソース・信頼など、銀行が持つ強みに着目し新たな収益源獲得へチャレンジする。

先に示した欧州成長行はこれら3つの視点での投資により着実な成果を残しつつある。ここではドイツ銀行のケースを示そう。

同行は 2015年から 2022年までを「Transformation Phase」と捉え「事業効率化」と「事業高度化」を両輪で推進し成長を実現してきた。「事業効率化」としては「10か国の拠点閉鎖」「エクイティ&トレーディング事業からの撤退」「ドイツ銀・ポスト銀統合によるPB事業のコスト削減」「約2.7万人の正社員削減」「約6千人の外部派遣社員削減」など、既存事業が直面している環境にあわせて業務の在り方を再定義している。また「ITアーキテクチャの刷新」「PB事業のデジタル化」「事業部門を支援するバックオフィス部門のシェアード化」などの「事業高度化」投資に加え、将来への布石としてテクノロジーとイノベーションに的を絞った投資を行っており、その投資額は130億€あまりに及ぶ。

さらに2023年からを「Sustainable Profitability Phase」として3つの視点点での投資を加速する構えだ。「2025年末までにコスト・インカム・レシオを62.5%未満とする」「コーポレート・投資銀・PB・ウェルスマネジメントへの高度化投資を継続、年平均 3.5~ 4.5%の収益増加を目指す」「グローバル・ハウスバンクとしてあらゆる金融問題の窓口となる銀行を目指し、優れたソリューションと商品力、最新のテクノロジープラットフォーム獲得へ集中的に投資する」など意欲的だ。

2つの難しさ

邦銀の経営幹部の方々と意見交換をさせていただくと、このような3つの視点での投資・構造改革を推し進める上では、2つの“リソース”のマネジメントの難しさをご指摘されることが多い。

① 投資 – 一部の大手行を除き構造改革にむける投資体力に制約が大きい。新たな投資原資を得るためのコスト構造改革も投資を要する、効果を享受するまでにタイムラグがある、などの難しさに直面する。

② 人財 – 変革を進める人財に質・量とも不足感が大きい。また、効率化によって浮いてきたリソースを、強化すべき領域に投下しようにも、スキルギャップが大きく、うまく人財を活かしれない。

成果へのコミットメント

このような2つの難しさがある中、3つの視点での構造改革を推し進めていくため、弊社は「バリューアップ型変革プログラム」と呼ぶ包括的な手法で邦銀の経営改革をご支援させていただきたいと考えている。

それは、変革プログラムの上流から下流までを一気通貫で繋ぐだけでなく、「コンサルティング」「デザイン」「テクノロジー」「オペレーションズ」といったサービスをバンドルし「変革を請け負うことで成果にコミットする」というものだ。

バリューアップ型変革プログラム

地域金融機関の変革アジェンダを例により具体的なアプローチを示そう(図表2)。

① カーブアウト – 特定の事業や業務をJV(ないし弊社にカーブアウトする。人財を転籍、システム資産を移管のうえJVが業務遂行を担う。変革プログラム開始段階でのベースラインとなるコスト・人財を明確化する。

② 事業効率化 – 対象とする事業・業務の生産性向上を図る。例えばチャネル構造改革。デジタル完結を実現することで、オペレーションや店舗のコスト削減やシステム構造改革を進めていく。

③ 事業高度化・新規事業推進-生産性向上による余力を活かし事業高度化や新規事業運営に取り組む。「銀行本体のデジタルディスラプト」「法人顧客や地域DXの支援」「BaaS事業やプラットフォーム事業の展開」などが想定される。推進にあたっては、人財の有効活用という視点も欠かせない。例えば、銀行のオペレーション人財を活かし、中堅・中小企業の事務を受託するなど、収益減の多様化を狙う。

④ リスキリング – 銀行本体の事業高度化、新規事業運営に向けた人財を供給。例えば、デジタル人財の育成は②③の取り組みが実践(OJT)の場となる。同時に弊社の実績ある人財育成プログラムを提供することで実効性を高める。

⑤ バリューアップ後返却 – 5-10年の長期契約を前提とする。長期間の契約を締結することで、1年目からコスト削減効果を銀行本体に還元するなど、目に見える効果を出していく。契約期間満了後には、生産性・付加価値向上、スキル人財獲得などバリューアップ後のビークルを銀行に返却することも可能とする。

「変革の支援」から「変革の請負」へ

このようなアプローチをとることで「生産性を向上した事業基盤や人財の獲得」「現人財規模での収益規模拡大」といった目に見える成果を生み出せるよう我々自身も変革を続けたい。

※FSアーキテクトは、金融業界のトレンド、最新のIT情報、コンサルティングおよび貴重なユーザー事例を紹介するアクセンチュア日本発のビジネス季刊誌です。過去のFSアーキテクトはこちらをご覧ください。

 

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