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第17/18回金融ウェビナーシリーズ:その3「 レガシーからデジタルへの移行に向けた新たなアプローチ」

ウェビナーシリーズ『「2025年の崖」を越えるための戦略的モダナイゼーション』の前半となる第17回金融ウェビナーをご紹介した本ブログの第1回2回では、ITモダナイゼーションの重要性が高まる背景、そして今なぜレガシーシステムが金融機関にとって大きな“崖”となっているのかについてお話しました。後半部分となる第18回金融ウェビナーをご紹介するブログシリーズ第3・4回では、 “2025年の崖”を克服し、レガシーモダナイゼーションを進める上で押さえるべき要諦と新たな発想、そして具体的なソリューションの選択肢について解説します。

ここまでのブログでお話してきたように、“2025年の崖”を克服する上で金融機関が抱えている最大の問題はレガシーシステムの存在、そして一番中心にあるシステムが最も古いという形で新旧システムが併存している複雑なシステム構造です。マニュアル業務の機械化による効率化と正確性の向上を目的として基幹システムが導入された後、蓄積された情報を財務管理や会計、経営上の意思決定に資する形で活用する情報系の取り組み、そしてこうした情報を現場へ効果的にフィードするためのデータ接続・処理の仕組みが発展しました。さらにはインターネットやモバイルの普及に伴い、顧客がネットを経由してシステムを直接活用するための仕組みが増設され、中核的な領域は古いまま、その周辺で様々なシステムが発展してきたことが問題を複雑化しているのです。では日本の金融機関は、今後レガシーシステムのデジタル化を進め、2025年の崖を克服するためにどのような手を打つべきなのでしょうか?

2スピードアプローチの重要性

ここで問題克服の重要な鍵となるのは発想の転換です。上で説明したシステム発展の過程が如実に示すように、これまでの基幹システム構築・拡張へのアプローチは、今あるものに対して改善を施す、あるいは機能を付加するという発想がベースにありました。しかしこれからは、既存インフラを活用する前提ではなく、新たにシステムを構築するという発想を重視したアプローチを考える必要があります。その大きな理由の1つは、知識・ノウハウの継承機会を創出することです。例えば伊勢神宮では、『式年遷宮』と呼ばれる習わしに従い、20年に一度社殿が新しく作り替えられ、その過程を通じて世代間の技術継承も行われています。一方、金融機関では30年変わらずにシステムが使い続けられた結果、知識の継承や技術者の世代交代、デジタル化をはじめとする新技術の導入が難しくなっているのが現状です。この問題を解消するために求められるのが、2スピードアプローチです。既存システムはコスト削減を継続的に行いながら活用し、それと同時に最も有効かつ効率的なテクノロジーを余すところなく使った新たなシステムを構築することで、知識と技術の継承に向けた流れを作るこのアプローチが、これまで以上に求められているのです。

デジタル移行に向けた3つのトランスフォーメーション・モデル

ではこの2スピードアプローチを活用しながら、具体的にレガシーからデジタルシステムへの移行をどのように進めるべきなのでしょうか?トランスフォーメーションの進め方としては、以下3つのソリューションが考えられます:

デジタル・デカップリング型

バックエンドの基幹システムを効果的に再利用・活用しながら、フロント側をデジタル化していくというアプローチ。クラウド基盤とAPI・RPA等を最新技術により新旧領域を連携。レガシーはSoR(System of Records)として存続させ、クラウド上にSoE(System of Engagement)を新設する。

デジタル・ビークル活用型

既存の基幹システムはそのまま維持しながら、新たなデジタルシステムをフロント・ミドル・バックオフィス領域全てにおいて構築するアプローチ。デジタルビジネスを切り離して最小構成でITを整備し、ビジネスがスケールするタイミングでレガシー領域をデジタル領域に置き換える。

トランスフォーメーショナル・ジャーニー型

各業務(例:新規契約業務や支払い業務など)の単位でできているアプリケーションをデジタル化していくアプローチ。足元で必要な仕組みを個別構築し、『EAガバナンス』に基づいて逐次的に理想型へ移行していく。

それぞれのモデルには様々な長所・短所がありますが、近年特に関心が高いのはデジタル・デカップリング型です。デジタル・ビークル型について は、フロントからエンドまで一気にシステムを構築するため、デジタル・デカップリング型と比べて既存メインフレームのもたらす制約を排除できるというメリットがあります。しかし、仮にプロジェクトの進行が途中で停止した場合に、新旧のインフラが残りオペレーションが分断されてしまうというリスクが生じることは念頭に置く必要があるでしょう。トランスフォーメーショナル・ジャーニー型については、有効な選択肢となる状況もあるものの、一般的にはあまりお勧めしません。大規模な基幹システムからプログラムやデータを段階的に移行すれば、移行のタイミング毎に接続法を考える必要が生じるなど、必ずしも効率的なアプローチとは言えないからです。その意味でも、多くのケースではデジタル・デカップリング型、デジタル・ビークル活用型が検討すべきアプローチとなるでしょう。

金融機関がIT モダナイゼーションを進める際に直面する問題は、上で解説したデジタル移行のアプローチ以外にもう1つあります。それは、前回のブログで触れた“容易に跳び越えられない崖”の存在です。多くの金融機関は、レガシーシステムからの移行に2000年代初頭以来何度か取り組んできました。しかしプロジェクトの検討・実行過程でリスクと難易度の低い分野でデジタル化を進めたため、莫大な時間と費用のかかるレガシー領域が依然として残っているのが現状です。次回のブログでは、新しい時代を見据えてレガシー領域を解消するためのアプローチとソリューション、そして実際の活用事例についてお話します。

第17回・18回のウェビナーでは4名のエキスパートが、ITモダナイゼーションの現状、そして“2025年の崖”が国内金融機関やメーカー・ベンダーにもたらす課題、その克服に向けて求められるビジョンと具体的ソリューションについて様々な事例を交えながら詳細にわたり解説しています。