COVID-19の響で 的一致性業のデジタルしているはパッケージ型商品で対面販売が主流の生保業界において、ニッチな保障に柔軟に対応できる新たな商品スキームの構築や、ビッグデータを活用した引受緩和、また購買体験のオンライン完結等、様々な取り組みが始まっている。
産業のデジタル化は情報の非対称性解消をもたらし、従来のように企業が推奨する商品を如何に効果的・効率的に顧客に届けるかよりも、顧客の購買行動・利用履歴から価値観を理解し、価値観セグメント毎に望む体験の提供が重要になってきている。
単に従来の提供価値・オペレーションをデジタルへシフトしただけでは、顧客の求める体験とは言い難いと考える。弊社がグローバルで実施している顧客意識調査からは、残念ながら海外と比較して、国内市場においては顧客の保険に対する期待と現時点での満足度との間に乖離が大きく見られた。海外ではどのような体験を提供できているかを見ながら、国内市場でのデジタル化の要諦について考察したい。

理想と現実のギャップ

アクセンチュアが2020年7-8月に実施した顧客意識調査(世界28か国の銀行・保険サービス利用者を対象としたサーベイ。回答数は47,810件)※性別は男女50%50%、年齢は18歳以上)から、顧客が理想とする保険会社像について見ていきたい。「理想の保険チャネルは?」という質問に対して、グローバル全体では、オンライン(PC)と共に対面に対するチャネル選好が強かった。従来から言われている通り、保険商品の複雑性や顧客自身のリテラシー等の問題から、完全なオンライン化よりは対面と組合わせたサポートを望む、といった傾向はグローバル全体でも同様の傾向が見られる。地域別に見ていくとチャネル選好に傾向が見られた。グローバル平均の期待値と比較した時に特に強い選好を示したチャネルとして、米国はライブ電話、中国は対面・オンライン(モバイル)・チャット、欧州大陸系(独・仏)は対面・eメール、北欧はオンライン(PC)が挙げられる。日本は、他チャネルと比較してオンライン(PC)の選好が強いものの、ほぼグローバル平均と同程度の強さであった。次に、チャネル毎の満足度について見てみると、日本以外の各地域とも、顧客が強い選好を示したチャネルにおいてはグローバル平均よりも高い満足度を示していることが分かった。一方、日本についてはチャネル選好の強かったオンライン(PC)を初め、どのチャネルも顧客満足度はグローバル平均よりも低く、顧客が求める理想と現実にギャップが生じているように見える。別の観点から見てみると、「保険会社に新たな商品・サービスの提供を期待するか」という質問に対して、グローバル平均よりも日本の期待値は低い。

ただし、これは顧客が保険会社に期待していないというわけではなく、日本国民は80%を超える保険加入状況から見ると、むしろ保険好きな国民と言える。ただし、革新的な商品・サービスを求めているというよりは、確実な保障、会社としての信頼性、手続きの簡便さ、といった従来の保障が提供する価値の磨き込みを求めているとも取れるし、逆に、これまで顧客の期待を超えるような新たな体験を提供できていなかった、という解釈もできる。
いずれにしても前述の通り、理想と現実にギャップが発生している状況の中、国内でも次々とデジタル化・オンライン化の施策の導入が始まっているが、現状のビジネスモデルを単にデジタルへシフトするだけでは、顧客の期待に応えることは難しい状況と考える。

グローバル生保の取組み

では、グローバル生保企業は如何にして顧客の期待に応えているのか。前述の各地域で顧客の強い選好・高い満足度を示したチャネルと紐づけて、いくつか実例を紹介していきたい。

~米国での事例

過去10年の生保系インシュアテックの投資動向を見ていくと、いくつかの価値創出のパターンに類型化されるが、その中の一つに“自分に最適な保険を如何に分かりやすく簡便に比較検討できるか”といった価値創出パターンがある。代表的なスタートアップとして2014年創業のPolicygeniusが挙げられる(161M USDを調達)。オンライン上で属性、生活習慣、家族の病歴等3-5分程度の質問に答えると、複数社の見積もりを取得可能。
サポートはAIではなく“ヒト”によるリモートでのアドバイスを受けることができ、 “ライブ電話”を好む米国の顧客選好を捉えたサービスと言える。利用者数は約100万/月(PVベース)となっている。(314)

~中国の事例

中国ではチャットに対する強い顧客選好が見られたが、その代表的な事例として平安保険が挙げられる。平安保険が提供する「好医生(グッドドクター)」は、国民が信用できると思う町医者が少ないため、大病院へ人々が集中した結果、軽い病気の診察にも数日の待ち時間が発生してしまっている顧客のペインを捉えたサービスを提供している。グッドドクターはチャットベースで平安保険と提携する信頼できる医師に相談でき、そのまま病院予約を行うことまで可能。

一方、平安保険は、グッドドクター経由で得た通院履歴等を通して顧客とのタッチポイントを得ることができている。外部企業が個人の非常にプライベートな情報を利用して保険のセールスに繋げているものの、顧客自身は平安保険によって安心の暮らしを保障してもらえていることで非常に高い満足感を得ている。また、ヘルスケアサービスだけでなく、保険の購入も、顧客が普段使いしているWechatを利用して手軽に入ることが可能。顧客のペインをうまく捉えながら、モバイル・チャットの利便性を十分に生かした体験の提供ができている。

~欧州大陸系での事例

米国の事例紹介の際に、生保系インシュアテックによる価値創出について簡単に触れたが、もう一つのトレンドとして、デジタルディストリビューターの出現が挙げられる。特にドイツで有名なWefoxの例を紹介する。欧州では対面に対する選好が強かったが、Wefoxは顧客と募集人のマッチングをサポートするプラットフォームによって、顧客にとって最適な“ヒト”によるアドバイスを手軽に受けられる、という体験を提供している。

従来、顧客は募集人に相談する際、都度の面会や紙での処理といった手間を抱えていたが、Wefoxのアプリをダウンロードし必要な情報を登録すると、一定のアルゴリズムに従い自身を担当する募集人がアサインされる。顧客と募集人とのコミュニケーションはチャットやオンライン上で実施されつつも、不明点はいつでも自身の担当に相談することができ、自分をサポートしてくれている相手が誰であるか見えている状態でコミュニケーションを取れるため、対面を重視する顧客の選好にマッチした体験になっているのではないかと考える。

~北欧での事例

北欧ではオンライン(PC)に対する選好が強かった。オンラインニーズを捉えた体験としてスウェーデンのInsurelyを紹介する。スウェーデンはパーソナルナンバーのインフラが整っており、医療、金融、行政といった様々なシーンでパーソナルナンバーの活用が可能となっている。よって、パーソナルナンバーを活用したオンラインでのフリクションレスな体験への期待は高く、また実装しやすい環境にある。Insurelyはパーソナルナンバーと紐づくBank ID(口座開設の際に必要となるID)を利用することで、契約手続き時の手間を削減すると共に、あらゆるブランドの契約を一元管理したり、家族のIDを利用して世帯全体の契約情報を管理したりといった利便性を顧客に提供している。本サービスを利用している顧客数は不明だが、2017年創業で現在までに約0.4M$の資金調達に成功している。

国内生保に求められること

日本は前述の通り、オンライン(PC)に対する期待値は相対的に高いものの、グローバルと比較すると低い状況。また、保険会社に新たなサービス提供を期待する声は限定的でもあった。そこで、保険会社が取り得る道として二つの方向性を考察する。

一つは、保険会社自身が自ら良体験を作り上げるのではなく、既にオンライン上で良体験を生み出しているエコシステムの一機能に組込むこと(Insurance as a Service)。もう一つは、“保険屋”としてのブランドを再定義すること(Beyond Insurance)。Insuranceas a Serviceは、モノ・コト消費のタイミングで購入される損保系商品との相性が良いと考えるが、生保系商品の場合、例えば健康・医療サービスに付帯する実損填補型の保障や、特定のコミュニティや地域住民が加入できる新たな団体性を捉えた保障の在り方が考えられるのではないだろうか。こういったアイディアを実現していくためには、外部の体験に繋がり、そこから得られる顧客のフィードバックを受けて保障の在り方をアジャイルに構築していくことが必要であり、そのためにはビジネス・システム・クリエイティブの三位一体でのプログラムの推進が重要になってくる。

また、二つ目のBeyond Insuranceは、保険の延長として付加サービスを提供するだけでは不十分と考える。顧客が保険会社を従来の“保険屋”のイメージから“健康を応援する企業”、“安心の暮らしを支える企業”といった新たなブランドとして認知するためには、お金を払ってでも利用したいと思えるような体験を提供し、体験を通じて顧客の認知を変えていく営みが必要と考える。それは、新たな事業ドメインを再定義していく取組みであると考える。顧客に求められる生保企業となるには、従来型のビジネスをデジタルへシフトしていくだけではなく、経営戦略や価値創造の営みそのものを変革していく。

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