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前回は、海外事例を参考に本邦銀行が目指すべき姿と取り組むべきデジタル変革についてご紹介しました。今回は変革を進める具体的な打ち手をご紹介します。

T字型人材の育成によるデジタル変革を推進

サイロ型組織やレガシーシステムに引きずられることなく、最短距離で理想に近づくためのアプローチとして、「ツー・スピード・アプローチ」をご紹介しました。このツー・スピード改革を成功に導く上では、人材の育成も極めて重要な課題です。変革の推進においては、顧客の視点に長けたCX(顧客体験)デザイナー、ビジネスの視点に長けたコンサルタント、技術の視点に長けたITアーキテクトの三者が必要です。しかし、それだけでは十分ではありません。

銀行本業のデジタル変革においては、たとえCX、ビジネス、ITアーキテクトそれぞれのアイデアが斬新であっても、それだけではイノベーションは実現できません。アクセンチュアは、この三者は自らのコア領域だけでなく、他の2つの領域も俯瞰的に見渡すことができる視点を備えた“T字型人材”(Tの中央部分が自分の専門領域、Tの両端が残りの2つの視点)でなければならないと考えています。T字型人材が一体となることで、本業のデジタル化に向けたアイデアの発想、プロトタイプ構築、検証を短いサイクルで回しながら、イノベーションを実現することが出来るのです。

銀行業界のデジタル変革におけるジレンマを解消する第三の選択肢

人間にしかできない新たな付加価値を追求する“人間中心”のビジネスモデルである「デジタル・ヒューマン・デジタル(DHD)バンク」を目指す上で、日本の銀行にとってジレンマとなっているのは、組織の壁、レガシーシステムの壁だけではありません。開発あるいはデジタル・プラットフォーム運営に関する態勢も変革の大きなポイントです。これまで日本の各銀行では、大きく分けて「自前開発型」と「システム共同センター型」のいずれかの態勢の中で変革が進められてきました。しかし、ここには様々な困難もあります。

自前開発型は、経営の自由度が高い反面、システム投資がかさみます。一方でシステム共同センター型には、コスト面でのメリットはあるものの、新たなサービスへの対応は相乗り行の同意が必要となるなど、自由度の面で大きな制約があります。

こうしたジレンマを解消する第三の選択肢として、アクセンチュアが提唱しているのが「dBaaS(dhd Bank as a Service)」です。dBaaSは、T字型人材、プラットフォーム、テクノロジーを1つの基盤に集約し、各行の変革をサポートする新たな協働の場です。参加各行は、ここで提供される人材やテクノロジーを活用して、個性ある顧客体験の創造にチャレンジすることができます。dBaaSの主な特徴としては、以下の3点を挙げられます。

①人材集積の場としてのdBaaS

各行が単独で確保するのが困難なT字型人材を、銀行内外からdBaaSに集めて共有。有望な若手をdBaaSに参加させ、育成の場として活用することも可能。

②システム基盤としてのdBaaS

dBaaSは、銀行のデジタル化に不可欠なロボIFやAPI基盤、また顧客分析機能、AIを組み込んだUIなどのNew ITを各行に開放。

③変革組織としてのdBaaS

dBaaSは“進化”に重点を置いた組織運営を行う。システム共同センターとは異なり、他行の合意を得ることなく、独自サービスの開発が可能。

図表1.変革に向けた態勢のオプション
図表1.変革に向けた態勢のオプション
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人材とシステム基盤・部品を共有化することで、投資額を抑制しスピードも保ち、最終的なサービスの組み立ては各行の独自性を保ちます。すなわち、銀行主導で透明性を保ち、生産性向上と人材・技術刷新を継続する運営を行うことが可能なのです。dBaaSは、本業のデジタル化/ディスラプトという業界全体の共通命題に対し、業界一丸となって取り組む道を拓くものであり、業界全体の生産性倍増、スピードの倍増、世界に誇れる究極の顧客サービス業の実現を目指しています。