フィンテックのディスラプター(創造的破壊者)が、銀行・保険・ウェルスマネジメントなど多くの分野で影響力を拡大する中、金融サービス機関は変革を進める必要性に直面しています。そして、こうした流れは世界規模で加速しています。2013年時点で50億ドル(約5400億円)に満たなかったフィンテック分野への投資額は、2017年をつうじて18%増加し274億ドル(約3兆円)に達しました (ニュースリリース)。今年2月にFinancial Timesが実施した調査によると、アジア太平洋地域で最も急速な成長を遂げつつある企業のトップ3はいずれもフィンテック分野でビジネスを展開しています。

前回の寄稿で触れたとおり、日本の金融機関ではコスト削減という枠組みを超えた新たなテクノロジーの活用という点で、海外機関と比べ慎重姿勢が目立ちます。ですが、ビジネスモデル変革への活用を求める急速な変化の波は、日本にも確実に押し寄せています。

人口縮小が進む今後、国内市場での収益低下を海外市場で補うことができるのは、ごく一握りの金融機関です。残りの多くは、データの有効活用や業種の壁を超えた連携などをつうじた新市場の創造に活路を求めるしかないのが現実でしょう。日本の金融機関はエコシステム、つまり異業種企業がそれぞれの強みを活かして連携する仕組みを積極活用する「エコシステム企業」への転換をますます求められているのです。

広がる新商品・サービスの可能性

「エコシステム」バンクへの転換を実現すれば、既存の枠組みを超え顧客のライフイベント全体をカバーする商品・サービスを提供可能になります。異業種企業との連携により、例えば銀行は顧客のライフスタイルに即した形でリアルタイムの金融アドバイザリー・サービスを展開できるようになるでしょう。保険会社であれば、ライフスタイルや健康に関する有益な情報を提供し、健康的な生活習慣を持つ顧客により好条件の保険商品を用意することも可能です。あるいは資産運用会社であれば、投資家それぞれのライフゴール(人生の目標)にあわせ、資産運用に関するリアルタイムのアドバイスを提供できるかもしれません。ここで重要なポイントとなるのは、業界の枠組みにとらわれない発想で、デジタル・エコシステム企業への転換がもたらす可能性を視野に入れることです。

すでにこうした取り組みを始めている先進的企業も現れています。例えばアクセンチュアは、これまで2つのプロジェクトにコアパートナーとして参加しました。その1つは、第一生命のスマートフォンアプリ「健康第一」の開発です。アナリティクスを駆使し、アジャイル環境で開発されたこのデジタル・ツールは、同社の健康増進サービス拡充の一環として一般公開されました。もう1つはふくおかフィナンシャルグループの「iBank」新サービスで、モバイルアプリ「Wallet+」などのデジタルプラットフォームをつうじて、個別ユーザーのニーズとライフスタイルに沿った金融サービスを提供しています。これらのプロジェクトに共通するのは、次世代消費者とのより効果的なコミュニケーション実現のため、取引を重視する従来型ビジネスの枠組みを超えた視点で先進的な試みを行っているという点です。

技術的課題の克服に向けて

2つのプロジェクトが持つもう1つの特徴は、様々な異業種企業との連携が重要な役割を果たしているという点です。デジタルサービス・エコシステム構築の多くのケースでは、ERPやIoT機器、センサー、スマートフォンなど、多種多様なチャンネルとシステムを介し、多くの参加企業のインプットを、既存システムの情報と統合することが求められます。その場合、連携をつうじた製品・サービス展開には極めて複雑な作業が必要となります。

これまでこうしたプロジェクトの実現は、ほぼ不可能と言っていいほど難しいものでした。中でも最大の壁となるのは、異なったプロトコルやAPIを持つ複数ベンダーのシステムを統合することで、2つのシステムを統合するだけでも大きな困難が伴います。アクセンチュアのACTS(Accenture Connected Technology Solution)は、まさにこうしたプロジェクトを実現可能にするために開発されたソリューションです。

これまで新たなテクノロジ・ソリューションを導入する際には、カスタムビルド、特定分野への既製品導入、開発・導入プロセスのアウトソースという3つの選択肢がありましたが、それぞれマイナス面も見受けられます。1つ目の選択肢の場合、開発に膨大な時間とコストがかかりますし、2つ目の場合は企業それぞれのニーズに対する柔軟な対応が難しいでしょう。また3つ目の場合は、テクノロジーの進化に対する長期的対応力が損なわれたり、「ベンダーロックイン」に陥るケースも見られます。

一方ACTSは、テクノロージの進化に応じてベストのコンポーネントを適時組み込むことが可能で、複数プレーヤーの効果的な連携実現に向けたアジャイルかつ効率的な開発環境を「フリクションレス」(摩擦ゼロ)で提供します。フリクションレスは、アクセンチュアが最新テクノロジートレンドの1つとして挙げているテーマで、今後の市場競争で鍵を握る大規模バートナーシップを実現するために欠かせない条件です。ACTSは、多くのパートナー企業の様々なデジタルソリューションをフリクションレスで1つのプラットフォームに統合可能で、例えば第一生命のプロジェクトでは「健康第一」アプリの開発に異業種企業24社が参加し、スムーズな連携を実現しました。

また、組織内外の多様な用途に活用可能な点もACTSの強みの1つです。これまでに実現したプロジェクトの多くは、B-to-C分野でのエコシステム構築をつうじて、既存・新規顧客とのタッチポイント(接点)を創造するという用途が主でした。しかし、ACTSは社内データ・情報管理システムの構築や部門の枠組みを超えた業務効率化、セールス・顧客関係管理など、組織内部の様々な目的にも活用可能です。

市場競争が激化する中、金融機関はビジネスの長期的持続可能性を確保することをますます求められています。そしてその鍵を握るのは、大規模パートナーシップをつうじてエコシステムを構築し、新たな商品・サービスを、ローコスト、低リスクかつ迅速に市場化することです。社内外のデータやシステムをシームレスにつなぎ、フリクションレスな連携を実現するACTSは、今後のビジネス展開及び成長の必須ツールと言えるでしょう。