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2022年にChat GPTがリリースされ、Generative AIの注目度が世界規模で拡大している。テキストや画像、音楽を生成できるなど今までのAIよりできることが多岐にわたっている。また、日本語での対応も進んでおり、一部の日本企業は既に業務への活用が進んでいる。

Generative AIは強力なツールとなる一方で、生成されたアウトプットが持つ著作権侵害や倫理違反などのリスクを理解した上で活用することが重要である。

本稿では、Generative AIができること、抱えるリスクを理解した上で、証券業界への活用の方向性を探りたい。

1.Generative AIとは

近年、人工知能分野において、Generative AIが注目を集めている。Generative AIは、人工知能アルゴリズムの一種であり、新しいデータやコンテンツを生成することができる。特に、最近はChat GPTが注目を集めており、多くの開発者や企業がその機能を活用している。

そもそも、AIの用途は技術の進化とともに発展しており、当初はルールベースのシステムが中心であったが、1990年代頃から機械学習が実用化され始め、データの分類やラベリング、画像・音声認識などの「分類系AI」や過去の膨大なデータから需要予測をする「予測系AI」へと普及していった。近年は、機械学習を強化した深層学習などの研究も進み、前述のChat GPTに端を発して過去のデータから新たなデータを生成する「生成系AIGenerative AI)」が最新のトレンドとして話題になっている(図表1)。

Generative AIはイーロン・マスクをはじめとする企業家・投資家が人工知能の無償公開・普及を推進するために多くのAI研究者を集め、2015年にOpenAIを設立したところから研究が進み、GPT3などの革新的なモデルが多数開発され、2022年にChat GPTがリリースされた。ChatGPTは、自然言語処理における最先端の技術を搭載したモデルであり、人間と同じ思考プロセスを経て質問に対する回答を生成することができる。Chat GPTを活用することで、文章生成や対話システム、自動翻訳、クエリ応答など、多様な分野で活用することができる。

また、Generative AIは、画像、音楽、動画、テキスト、仮想的な環境など、様々な種類のコンテンツを生成することができる(図表2)

テキスト

ビジネス文書の生成や論文・記事の要約、専門性の高い分野の情報検索・翻訳、アイディアの生成やプログラムコードの生成まで多岐にわたる自然言語処理に対応できている。

イメージ

イメージを言語で伝えて画像や動画を生成、また写真をインプットにアバターの作成などができる。

サウンド

音声サンプルからその人の声を真似た音声を生成、また音楽の構造を学習し、新たな音楽を生成するなどができる。

このようにGenerative AIができることが多岐にわたるため様々な分野での活用が期待される。例えば、医療分野では、過去の症例データ等を基に患者との診断計画を作成、初期診断をChatで実施するなどの活用が検討されている。また、工学分野では、新しい材料や構造を設計するために活用されるなど、活用の幅を広げており、証券業界での活用余地についても検討していきたい。

2.Generative AIに潜むリスク

Generative AIは活用の幅が広がっていく一方で、著作権侵害や風評被害、サイバー攻撃などの犯罪に関わるリスクも存在する。こうしたリスクを認識した上で活用を検討すべく、いくつかリスクを例示する。

学習データの著作権侵害

所有権、著作権など権利許諾を受けていないデータを生成系AIが学習する場合があり、知らない間に著作権を侵害しているリスクがある。

サイバーセキュリティの脆弱性

サイバー犯罪者は、Generative AIを使用して、フィッシング詐欺やシステムに侵入するための認証情報を作成することが可能。また、生成系AIのモデルに悪意のある入力を与えて騙そうとする敵対的攻撃などセキュリティ上の脆弱性になるリスクがある。

出力内容の低い信頼性・正確性

出力された内容について、信頼性や正確性が低く、バイアスがかかっており虚偽が含まれる場合があり、人間が正誤を判断した上で利用する必要がある。また、ディープフェイク画像など視覚的コンテンツが精工細工されて出力された内容について、非常にリアルに見え、編集されたデジタルメディアに残されたフォレンジックトレースがないため、人間や機械でさえも検出することが困難である。

利用保障

Generative AIに関連するサービスを利用する際、多くの場合、契約上の保証や利用者に対する保護がない、あるいは限定的であることが多いので、利用者側の誤使用による個人情報の流出などリスクに対する保障の整備が進んでいない。

AI出力の知的財産権

Generative AIによって出力されたコンテンツは所有権を主張することができない。

3.証券業界での活用余地

前述で示したGenerative AIにできることを踏まえて、証券業界での活用を検討していく上で、今回は営業員向けのAIパワードアドバイザーとしての活用可能性を紹介したい(図表3)。

Generative AIによりアナリティクスを活用した推奨アドバイスのレコメンドや適切なタイミングでアラート通知、フォローメール生成などのサポートにより営業員のコンサルティング業務の高度化が狙える。また、見込み客の醸成に向けたセミナー紹介や問い合わせ対応(メール・チャット)といった顧客とのコミュニケーションの一部をGenerative AIが担うことにより、適切な情報をリアルタイムで顧客へ提供できるようになり、顧客サービスの高度化も見込める。

具体的なGenerative AIによるサポート内容を以下に説明する。

A. 営業員のデジタルサポート

Generative AIにセールスのアシスタントとしての役割を与え、営業員はAIと対話をしながら提案書の自動生成やニーズ予測など情報収集や定型業務の依頼を行うようになり、包括的な業務の高度化・効率化が実現できる。

BAI活用によるアドバイザリ高度化

CRMシステムやナレッジシェア基盤、公開データ等を用い、アナリティクスを活用した推奨アドバイスやニーズ予測等の付加価値につながるレコメンドをアラート通知することや、顧客に関する情報・ニーズを検知した際のフォローメールのドラフトを営業員へ提示することで、顧客向けのリアルタイムなフォローが行えるようになり、アドバイザリサービスの高度化につなげる。

Cデータ・AI活用による顧客サービス高度化

Generative AIを顧客向けにもチャネルとして提供し、顧客は事例の取得やイベント・セミナー案内の受取/参加登録等が可能になり、投資関連情報の提供や担当者情報の照会も可能になる。また、チャットによる対話型コミュニケーションで必要な情報をリアルタイムに顧客の好きなタイミングで提供できる。

4.おわりに

今回Generative AIの証券業界への活用の方向性としてAIによる営業員アシスタントを紹介した。今回紹介したセールスサポート業務以外にもトレーディングやミドル・バックオフィス業務への適用など証券業界への適用可能性は多岐にわたる為、弊社としても変革のパートナーとして共に検討していけると幸いである。

最後に余談ではあるが、今回寄稿した記事のタイトルはChat GPTのアイディアを参考に決めたものである。

※FSアーキテクトは、金融業界のトレンド、最新のIT情報、コンサルティングおよび貴重なユーザー事例を紹介するアクセンチュア日本発のビジネス季刊誌です。過去のFSアーキテクトはこちらをご覧ください。

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