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日本の経営層やIT関係者に衝撃を与えた「2025年の崖」から2年。アクセンチュア金融ウェビナーでは、2025年の崖をいかに乗り越えるべきか、DX推進と両輪で進めるモダナイゼーションの現実的な施策について議論を深めてきました。今回は2020年を通じてより鮮明になった課題を整理しつつ、アップデートした最新情報をお伝えします。

2020年に明確になった「モダナイゼーション」の8つのテーマ

経済産業省の「DXレポート」が2018年9月に公表されてから、すでに2年以上が経過しました。アクセンチュア金融ウェビナーでも2019年には「2025年の崖を前にし、モダナイゼーションを今すぐやるべき理由」を議論してきましたが、多くの企業が実践の段階に入った2020年には新たな課題や事実が明らかになってきました。今回のウェビナーではその項目を以下の8つに整理しています。

1. 気がついたらトップランナー

2. メインフレームにおける第4世代言語の課題が顕在化

3. 基幹システムの”手作業”による作り直しの限界

4. 増え続けるトランザクションデータ

5. 抜け出せない事務保守への投資

6. SOE人材が不足、コロナで育成も難化

7. モダナイゼーション推進の難しさ

8. 実際のところ、どうなの?

1. 気がついたらトップランナー

モダナイゼーションは長期間を要する取り組みですが、ベストプラクティスの適用や、先行事例を参照して世の中で使い慣れたソリューションの導入をしようにも「すでにタイムリミットが迫っている」という点で非常に難しいテーマです。お客様の担当者が「当社が最初の導入ケースとなるのですね」とおっしゃるケースも増えました。多くの企業がメインフレームからの脱却を進めている中でも、業界最大手企業では逆に「メインフレームを使い続け、最後尾を走る」という意思決定をできることから、結果として「追いかけていたはずの自社が、気づけば業界のフロントランナーであった」という事例が目立っています。

2. メインフレームにおける第4世代言語の課題が顕在化

モダナイゼーションのプロジェクトではCOBOLやPL/Iといった「手続き型プログラミング言語」だけでなく、アプリケーション開発の生産性を高めるために使われた第4世代言語(4GL)の中でも特にマイナーな言語が頻繁に登場します。これらの特殊な言語は、ほとんどの技術者が現役を退いていることからメインフレームよりも厄介な存在です。1980年代には4GLがエンジニア不足の現場を助けたことは事実です。しかし技術が継承されないままアプリケーションだけ使われ続けることになったことから、今ではモダナイゼーションの大きな落とし穴となっています。

3. 基幹システムの”手作業”による作り直しの限界

現在も稼働しているレガシーシステムは、2000年問題や2007年問題(団塊の世代の一斉退職の始まり)時代の「オープン化の波」を耐え抜いて今なお存続しているものばかりです。つまり、移行難易度が極めて高いITシステムしか残っていません。手作業での再構築を検討するお客様のほぼ全てが「移行不可能」という結論に達するのはこのためです。一筋の光明といえるのが「AIの活用によるオートメーション移行技術」の発展です。たとえば移行作業の自動化(機械化)によって、12億円見積のプロジェクトが9億円で完了した事例もあるなど、オートメーションの効果が2020年には明確になりました。

4. 増え続けるトランザクションデータ

従来の金融機関の基幹システムでは、トランザクションの急増を想定しないアーキテクチャが一般的でした。しかし昨今では「データを扱うビジネスモデル・商材」の急拡大によって処理するデータが爆発的に増大しており、トランザクション件数もすでに2〜3倍となっています。しかもデータの爆発的なペースは予想が困難です。柔軟性の高いアーキテクチャが必要であると見込まれます。

5. 抜け出せない事務保守への投資

金融機関のお客様の多くが、従来の「事務処理中心のシステム」から、「顧客志向のサービスを支えるシステム」へとシフトしようとしています。しかしフレキシブルなサービスを実現するためのシステムの設計思想は、メインフレームの世界観とは大きく異なります。これはメインフレームが事務処理の徹底的な合理化(紙での事務処理の電算化)を目指していたことに由来します。こうした「アーキテクチャのギャップ」がビジネス変革の阻害要因であることがよりはっきりしてきたのが2020年の特徴です。

メインフレームは垂直統合型の固定的な仕組みです。セキュアで高可用性が強みである一方、柔軟性に乏しい。「誰のためのシステムなのか?」という発想で、根幹から作り方を変えなければなりません。事務システム保守が中心となっているITポートフォリオを変革することや顧客中心サービスを実行していくうえでは、経営層が「投資の発想」を持つこと不可欠です。「事務レス」のアーキテクチャの検討など、ビジネスのあり方の根幹に関わる議論が2020年には始まっています。

6. SOE人材が不足、コロナで育成も難化

ビジネス、業務、ITシステムの構造改革を担う、業務理解とデジタルの知見を持つ人材の不足が各所で深刻化しています。かつて基幹システムを設計構築する際は、生産や営業といった業務部門から選りすぐりのメンバーが集結したのがIT部門でした。しかし現在では保守のための組織となりつつあるだけでなく、コロナ禍の影響による在宅勤務でOJTも進まず、ノウハウの引き継ぎも難しくなっています。デジタルを推進していく上でもスキルセットを刷新が不可欠であるため、新たな発想での投資が必要です。

7. モダナイゼーション推進の難しさ

モダナイゼーションは業務側にメリットと意義が伝わりにくく、「一見すると業務要件と関連性の低い仕事をしているように見えてしまう」というプロジェクト推進上の難点があります。つまりITの構造変革の重要性や狙いが社内の認知を得にくいと言えます。現代において顧客視点のビジネスを実現するには、メインフレームでは時代遅れが否めません。DXがお客様とアクセンチュアでオープンに進めていくものであるならば、モダナイゼーションはお客様の内部にアクセンチュアメンバーが入り込んでお客様と協働する分野です。モダナイゼーションは世界的にも加速しており、迅速なモダナイゼーションの取り組みへの着手が必要です。

8. 実際のところ、どうなの?

2020年は、実装の本丸のフェーズに入るプロジェクトが増加しました。しかし現場では「イージー変換がイージーでなかった」といったテクニカル上の困難さに直面したほか、「ソースコードがない」「資料がない」といったプロジェクトを停滞させる問題も頻繁に起こりました。「データベースがなかった時代にアセンブラとCOBOLでデータベースが構築されていたため、DBが誰にも読めなくなっていた」という難易度の高い課題に遭遇したこともあります。そもそも移行が困難なほど複雑かつ手に負えないシステムであるからレガシー化していたのであり、プロジェクトのパターンも千差万別です。

一方で、特に「プロジェクト失敗」のケースとしては、企画部門が推進したが運用部門が追随できずにテスト完了へ至らず、カットオーバーを迎えられなかったといったケースです。運用を預かる部門の意向を汲み取ってコンセンサスを得ながら、レガシーを段階的に解体していくうえでは、「経営層がプロジェクトを理解する」ことこそが最大の成功要因となりえます。

今回のウェビナーでは、「2025年の崖」を乗り越えるモダナイゼーションの現実的な施策について、2020年の1年間で得られた示唆をご紹介しました。本記事の内容は、オンデマンド視聴可能なウェビナーでより詳しく紹介しております。ハンズオン資料のご提供ほか、豊富な図版を交えた説明、視聴者からのQ&Aを含む約55分の映像コンテンツとなっておりますので、ぜひご視聴ください。

 

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西尾 友善

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