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近年、システムモダナイゼーションへの取り組みが活発化しており、レガシーシステムからの脱却が加速している。

金融業界においては、各金融機関が持つシステム処理の複雑性・規模の大きさや処理品質要求の高さなどがネックとなり、徐々に具体的な検討およびProof Of Concept(POC)等が進んでいる状況である。

しかし、これらの対応には長期間かつ多大な費用が必要であり、実行の確実性に関する情報が不足しているため、その必要性やコスト面での妥当性を判断することが極めて難しい状況であり、金融業界全体として大きな課題となっている。

本稿では、弊社の豊富な知見に基づき、システムモダナイゼーションの早期検討着手を推奨することとしたい。

検討動機と背景

➀アーキテクトトレンドの変遷

第一に、アーキテクトトレンドの変遷が挙げられる。例えば、富士通は2030年までにメインフレーム製造から完全撤退することを決定しており、その製品を利用している企業は2035年の保守撤退期限までに対応が必要となる。また、NECやIBM(現Kyndryl)も製品供給を継続しているが、同様のリスクや価格上昇リスクが常に存在している状況である。

➁既存資産の膨張

第二に、システム開発における既存資産の膨張が挙げられる。旧式のアーキテクチャを利用していたため、限られたリソース(メモリやディスク等)を有効活用するための工夫が現在も残存しており、これが柔軟な変更や新規機能導入の障害となっている。具体的には、当時の技術的制約に基づいて構築された複雑なコードやデータ構造が、そのまま維持されているため、システムの改修や新規機能の追加が非常に困難である。このような状況では、新しいビジネスやサービスを迅速に市場に投入することが難しく、結果として競争力の低下や機会損失が発生するリスクが高まる。また、これに伴う開発コストや時間も膨大になり、システム全体の効率性を著しく損なうこととなる。

➂技術者の不足

第三として、技術者の不足傾向が挙げられる。メインフレームの開発には主にCOBOL・アセンブラが利用されるが、プログラミング言語調査(日経BP)によれば、これらはスキルを磨く必要のない言語として上位にランクされており、開発者不足に陥ることが問題視されている。

これらの背景から、モダナイゼーションの検討に着手する金融機関は増加しているが、対応手法の選択に悩まされることが多い。次に、これらの対応手法と選択基準について考察する。

対応手法と選択基準

モダナイゼーションの対応手法は大きく4種類に分類される。

1.リホスト:既存アプリケーションに極力手を加えず別のプラットフォームへ移行する手法。

2.リライト:COBOL等で書かれた既存アプリケーションプログラムを、オープン言語を用いてそのまま再記述し機能を再現する手法。

3.ラッピング:システムインターフェイスを業務ニーズに合わせて再構築し、既存のアプリケーションをうまく再利用する手法。

4.リビルド:新規システムを構築するために要件定義を実施し、既存システムを全く新しいシステムに再構築する手法。

それぞれの手法のメリット・デメリットについては、弊社2022年春号の「勘定系モダナイゼーション~経営判断における本質的な問い」を参照されたい。これら手法の採択にあたっては、技術的実現性はもちろんのこと、費用・期間・開発人員や技術力の確保等を慎重に検討する必要があるため、各金融機関により差はあるものの、全体として検討はまだ道半ばである。

早期モダナイゼーション検討の必要性

ここで筆者は、早期にリライトを用いたモダナイゼーション検討に着手することを強く推奨したい。理由としては以下3つが挙げられる。

➀リライト技術の向上

リライトには、現行のCOBOLなどで記載されたプログラムを新しくJavaなどのモダンな形式に変換するツールが必須だが、弊社が持つツールMajaris(図表1)についても、弊社での各種テストや実際の移行局面で少しずつ精度が向上してきている。これにより、リライト作業の大半を占める変換エラーに関するテストが減少し、早期に移行を完了することが見込まれる。

➁処理性能の向上

ホストコンピュータでの処理を、各種クラウドやIAサーバ等で代替することは、大規模バッチ処理やオンライントランザクションの集中等のタイミングで難しいと言われてきたが、それらについても問題が解決しつつある。

弊社の知見によれば、金融機関のソース量やトランザクション量について大幅な伸びは見られず、ある企業においては10年間で10%~20%程度の増加にとどまっている。これにより、対応処理能力の不足による各種処理の遅延や処理エラーなどのリスクが低減してきている。

➂移行費用の低減

検討開始から実移行の完了まで含めた総費用について、一部機関において数十億~数百億円程度と、ホストコンピュータの維持にかかる費用と比較し現実的な数字まで低減することが可能になってきている。

弊社での各種知見蓄積やこれまで述べてきた各種技術動向の変遷を背景に、対応検討余地が十分にある状態にまで伸びてきている。

参考までに、単純に開発費と減少する維持費用で差額を取った場合の例を示す。(図表2)

開発費が200億と大きな金額になったとしても、5年程度で回収可能な金額となる。※金額感については筆者知見に基づき算出これら弊社知見を踏まえると、各金融機関におけるモダナイゼーションは、提供ベンダーがサポートを終了するリスクやコスト高騰リスク、技術者の不足など外部的要因だけでなく、将来的なシステム開発の柔軟性確保やスピードの追及など、自己改善の手段としても検討を加速させるべきである。

終わりに

金融機関におけるモダナイゼーションは、ホストコンピュータの重要性、処理の複雑さ、長期間の開発影響等、他業界に比較しても大きなインパクトを及ぼすことから、これまで計画化の契機は、富士通社による開発終了など、外部影響によるものが大きかった。

だが現時点の経験値を踏まえれば、コスト削減・スピーディなシステム開発等を前提とした、会社としての競争力確保のために前向きに検討を行うに十分な状況になってきていると言ってよいだろう。

最後に、モダナイゼーションの波は確実に各社におとずれるものと考えられることから、出来る限り早く対策を打つことは、人材の確保や、更なるリスク(新たな開発終了ベンダーの発生や、利用ソフトウェア費用の大幅増など)への対策としても有効であると考えられる。

弊社知見を活用し、是非、モダナイゼーションの検討・実行に踏み切って頂きたい。

FSアーキテクトは、金融業界のトレンド、最新のIT情報、コンサルティングおよび貴重なユーザー事例を紹介するアクセンチュア日本発のビジネス季刊誌です。過去のFSアーキテクトはこちらをご覧ください。

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